【費用・工期目安】高齢者の階段を安全に!ホームエレベーター・階段昇降機リフォーム
ご自宅や離れて暮らすご実家で、高齢の親御さんが階段の上り下りに不安を感じている、あるいはすでに難しくなっているというケースはないでしょうか。階段は家の中での移動を妨げる大きなバリアとなり得ます。手すりの設置や段差解消といったリフォームだけでは対応が難しくなった場合、ホームエレベーターや階段昇降機の設置を検討される方もいらっしゃいます。
これらのリフォームは比較的大規模な工事となるため、費用や工期が気になるかと思います。この記事では、ホームエレベーターと階段昇降機のリフォームについて、種類やそれぞれの特徴、費用や工期の目安、利用できる可能性のある制度など、検討に役立つ情報をご紹介します。
高齢者の階段の負担を減らすリフォームの選択肢
高齢になり足腰が弱ってくると、階段の上り下りは転倒のリスクが高まるだけでなく、体力的にも大きな負担となります。安全と安心を確保するために考えられるリフォームには、主に以下の選択肢があります。
- 手すりの設置: 階段の壁に沿って手すりを設置する最も一般的なバリアフリーリフォームです。体を支えながら安全に上り下りできるようになります。
- 段差解消: 階段自体の段差を緩やかにしたり、踏み面を広くしたりする方法ですが、構造的な制約があり難しい場合が多いです。
- 滑りにくい床材への変更: 階段の踏み面に滑り止め効果のあるシートや床材を貼ることで、転倒リスクを減らします。
- ホームエレベーターの設置: 建物内にエレベーターを設置し、階の移動を完全に機械で行う方法です。
- 階段昇降機の設置: 階段の形状に合わせて設置し、いすや車いすが階段に沿って昇降する機械です。
この中で、階段の上り下り自体が困難になった場合に有効なのは、4と5の機械を使った方法です。これらは比較的大規模な工事や費用が必要となりますが、生活の質を大きく向上させる可能性を秘めています。
ホームエレベーターとは?
ホームエレベーターは、住宅内に設置する小型のエレベーターです。一般的に、1階と2階(またはそれ以上の階)を安全に移動するために設置されます。
特徴:
- メリット:
- 安全で快適な移動が可能です。
- 複数人や荷物と一緒に移動できます。
- 車いすでの移動も可能です。
- 導入することで、将来的に介護が必要になった場合でも、自宅での生活を継続しやすくなります。
- デメリット:
- 設置に広いスペースが必要です(カゴの大きさ+機械室など)。
- 設置費用が非常に高額になります。
- 定期的なメンテナンスが必要です。
- 停電時は使用できません(非常用電源がある機種もあります)。
設置場所: 屋内に設置するのが一般的ですが、屋外に設置してサンルームやベランダとつなげるケースもあります。設置場所には、建築基準法に基づく確認申請や、自治体への届出が必要になる場合があります。
費用と工期目安: * 費用: 500万円~1,000万円以上(機種、階数、工事内容による) * 工期: 1ヶ月~3ヶ月程度(設置場所の準備工事や建築工事が必要なため)
ホームエレベーターの設置は、建物の構造に大きく関わるため、事前に専門家による詳細な調査と検討が不可欠です。新築時に導入する方が、リフォームで後から設置するよりも容易で費用も抑えられる傾向があります。
階段昇降機とは?
階段昇降機は、階段の勾配に沿ってレールを設置し、そのレール上をいすや車いすが昇降する装置です。階段の形状(直線、曲線)に合わせて様々な機種があります。
特徴:
- メリット:
- ホームエレベーターに比べて比較的安価で設置できます。
- 設置に必要なスペースが少なく済みます。
- 階段の形状に合わせて設置しやすい機種が多いです。
- デメリット:
- 一度に一人しか利用できません。
- 車いすから乗り換える必要がある機種が多いです(車いす対応型もありますが高額)。
- 使用しない時でも階段にレールや本体が残るため、見た目が気になる場合があります。
- 機種によっては階段の幅が狭くなることがあります。
種類:
- いす式昇降機: 階段に設置されたレールに沿って、いすに座って昇降するタイプです。最も一般的で、直線階段用と曲線階段用があります。
- 車いす用昇降機: 車いすごと乗降できる広いプラットフォームが付いたタイプです。設置スペースがより必要になりますが、車いす利用者にとっては便利です。
費用と工期目安: * いす式昇降機(直線階段用): * 費用: 40万円~80万円程度 * 工期: 1日~3日程度(レールの設置のみなら短期間で済みます) * いす式昇降機(曲線階段用): * 費用: 100万円~200万円程度(階段の形状に合わせてオーダーメイドとなるため高額) * 工期: 3日~1週間程度 * 車いす用昇降機: * 費用: 200万円~400万円程度 * 工期: 3日~1週間程度
階段昇降機は、ホームエレベーターよりも手軽に設置できる反面、利用できる人が限定されるという側面があります。将来的な介護の必要性や、他の家族の利用なども考慮して検討することが大切です。
どちらを選ぶか?検討のポイント
ホームエレベーターと階段昇降機、どちらを選ぶかは、以下の点を考慮して比較検討することをおすすめします。
- 予算: ホームエレベーターは圧倒的に高額です。予算に応じて現実的な選択肢を絞り込みましょう。
- 設置スペースと建物の構造: ホームエレベーターはまとまったスペースが必要で、建物の構造補強が必要になる場合もあります。階段昇降機は階段の幅や形状に依存します。専門業者に現場を確認してもらい、設置が可能か、どのような工事が必要かを確認しましょう。
- 利用者の状況と将来: 現在の階段の負担度合い、車いすの利用があるか、将来的に介護が必要になる可能性など、利用者の現在の状態と将来の見通しを考慮します。複数人での移動が必要かどうかも重要なポイントです。
- 工事の規模と期間: 大規模な工事は、生活への影響も大きくなります。それぞれの工事期間を把握し、どの程度許容できるか検討しましょう。
利用できる公的支援制度は?
バリアフリーリフォームには、介護保険や自治体の補助金制度が利用できる場合があります。しかし、ホームエレベーターや階段昇降機の設置に関しては、注意が必要です。
- 介護保険: 介護保険の住宅改修費の支給対象となるのは、原則として「手すりの設置」「段差の解消」「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」「引き戸等への扉の取替え」「洋式便器等への便器の取替え」「その他これらの住宅改修に付帯して必要となる工事」です。ホームエレベーターの設置は、この住宅改修費の支給対象外です。いす式階段昇降機についても、一般的には「特定福祉用具購入」や「レンタル」の対象となる場合があり、リフォーム工事費としては対象外となるケースが多いです。ただし、自治体によっては異なる解釈や独自の補助制度がある場合もありますので、お住まいの市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに確認してみることをおすすめします。
- 自治体独自の補助金: 一部の自治体では、高齢者や障がい者のための住宅改修に対して、独自の補助金制度を設けています。この中に、ホームエレベーターや階段昇降機の設置費用の一部を補助する制度が含まれている可能性もゼロではありません。必ずお住まいの自治体の窓口に問い合わせてみてください。
いずれの制度も、申請には事前の手続きが必要な場合がほとんどです。工事を始める前に、必ず担当窓口に相談し、対象となるか、どのような条件があるかを確認することが重要です。
業者選びのポイント
ホームエレベーターや階段昇降機の設置は専門性の高いリフォームです。安心して任せられる業者を選ぶことが重要です。
- 実績と専門知識: ホームエレベーターや階段昇降機の設置実績が豊富で、専門知識を持った業者を選びましょう。特に、階段の形状が特殊な場合や、建物の構造に不安がある場合は、経験のある業者に相談することが大切です。
- 現地調査と丁寧な説明: 必ず自宅に来てもらい、現場の状況を詳細に調査してもらいましょう。その上で、設置の可否、最適な機種の提案、工事内容、費用、工期について、分かりやすく丁寧に説明してくれるかを確認します。
- 複数の見積もり比較: 複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討しましょう。費用だけでなく、工事内容、使用する機種、保証、アフターサービスなども含めて総合的に判断します。
- アフターサービスとメンテナンス: ホームエレベーターや階段昇降機は機械製品ですので、設置後のメンテナンスが重要です。定期的な点検や、故障時の対応について、どのようなサービスがあるか確認しておきましょう。
まとめ
高齢の親御さんの階段の不安を解消するためのホームエレベーターや階段昇降機の設置は、費用も工期もかかる大がかりなリフォームですが、安全と快適な暮らしを取り戻すための有効な手段となり得ます。
ホームエレベーターは移動の自由度が高いですが、費用とスペースが必要です。階段昇降機は費用を抑えられますが、利用に制約があります。どちらが自宅の状況や利用者のニーズに合っているか、ご家族でよく話し合い、専門業者に相談しながら検討を進めることが大切です。
公的な支援制度についても、対象となるか、どのような条件があるか、必ず事前に確認しましょう。信頼できる専門業者を見つけ、適切な提案を受けながら、安全で快適な住まいづくりを実現してください。