これで安心!高齢者の身体機能の変化に合わせたバリアフリーリフォーム
ご両親の暮らしを安全で快適にしたいとお考えの皆様、こんにちは。
加齢に伴い、人の身体機能は少しずつ変化していきます。若い頃は気にならなかった自宅の段差や通路の幅、照明の明るさなどが、思わぬ事故の原因となることがあります。例えば、視力や筋力の低下、バランス感覚の衰えなどが、転倒や怪我のリスクを高めることに繋がります。
親御さんが住み慣れたご自宅で、これからも安心して暮らしていくためには、こうした身体機能の変化に合わせたバリアフリーリフォームを検討することが大切です。
この記事では、加齢による主な身体機能の変化が、ご自宅のどのような場所で危険を生むのか、そして、それに対してどのようなバリアフリーリフォームが有効なのかを、具体的な対策とともにご紹介します。費用や利用できる公的制度についても触れますので、ぜひご家族での話し合いやリフォーム計画の参考にしてください。
加齢による主な身体機能の変化と自宅に潜むリスク
まずは、加齢によって起こりやすい身体機能の変化と、それが自宅のどのような場所で危険に繋がりやすいかを見ていきましょう。
- 視力・視野の低下:
- 暗い場所や影になった部分が見えにくくなります。特に階段や廊下、玄関など、移動する場所での段差や障害物が見えにくく、転倒のリスクが高まります。
- 色の識別が難しくなり、段差の縁や手すりの位置などが分かりにくくなることがあります。
- 筋力・バランス感覚の低下:
- 立ち座りや歩行が不安定になり、ふらつきやすくなります。特にトイレや浴室での立ち上がり、階段の昇降時に支えが必要になることがあります。
- 小さな段差でもつまずきやすくなり、転倒からの骨折などの重症化リスクが高まります。
- 関節の可動域低下・痛み:
- 腕や脚を大きく動かすのが辛くなり、開き戸の開閉や、しゃがんで行う作業などが難しくなります。
- 階段の昇降が負担になることがあります。
- 感覚の変化(温度など):
- 温度に対する感覚が鈍くなり、急激な温度変化に気づきにくくなります。これにより、浴室や脱衣所、トイレなどでのヒートショックのリスクが高まります。
これらの変化は誰にでも起こりうる自然なことです。大切なのは、変化に合わせて住環境を整え、自宅に潜むリスクを減らすことです。
身体機能の変化に対応する具体的なリフォーム対策
それでは、上記の身体機能の変化に具体的に対応するためのリフォーム対策を見ていきましょう。
1. 視力・視野の低下に対応するリフォーム
- 照明の増設・調整:
- 廊下、階段、玄関、トイレ、浴室など、移動する場所や温度差の大きい場所の照明を明るくします。足元を照らすフットライトも有効です。
- 人感センサー付き照明にすることで、スイッチを探す手間がなくなり、消し忘れも防げます。
- 眩しすぎず、影ができにくい、均一な明るさの照明を選びます。
- 床や壁の色の工夫:
- 段差の縁に、周囲と色の異なるラインを入れるなど、視覚的に分かりやすくする工夫をします。
- 壁や床の色を明るく統一すると、部屋全体が明るく見え、奥行き感がつかみやすくなります。
- スイッチの工夫:
- 照明スイッチを大型のものや、点灯時・消灯時で色が変わるタイプに変更すると、操作しやすくなります。
2. 筋力・バランス感覚の低下に対応するリフォーム
- 手すりの設置:
- 設置場所: 玄関(上がり框の近く)、廊下(特に長い廊下)、階段、トイレ、浴室(浴槽の出入り、洗い場)、脱衣所。
- 効果: 立ち座りや歩行時のバランスを補助し、転倒を防ぎます。
- 形状: 縦型、横型、L字型など、場所や用途に合わせて適切な形状を選びます。握りやすい太さや素材、滑りにくい加工がされているものが望ましいです。
- 段差の解消:
- 玄関の上がり框に式台やスロープを設置します。
- 室内の小さな段差(敷居など)をスロープ設置や床のかさ上げで解消します。
- 費用目安: 数万円〜数十万円程度(場所や工事内容による)
- 滑りにくい床材への変更:
- フローリングにワックスをかけすぎない、滑りにくい加工がされた床材を選ぶ、カーペットを敷くなどの対策があります。浴室や脱衣所には水に濡れても滑りにくい床材が必須です。
- 転倒時の衝撃を和らげるクッション性のある床材を選ぶことも検討できます。
- 立ち座りを補助する設備の設置:
- トイレに手すり付きの便座や、電動昇降機能付きの便座を設置します。
- 浴室に据え置き型やリフト式の浴槽、シャワーチェアなどを設置します。
3. 関節の可動域低下・痛み、身体の向きを変えるのに対応するリフォーム
- 扉の変更:
- 開き戸を引き戸や折れ戸に変更します。開き戸は開閉時に広いスペースが必要で、身体を大きく動かす必要がありますが、引き戸や折れ戸は比較的少ない動きで開閉できます。
- 費用目安: 1箇所あたり10万円〜30万円程度(扉の種類や壁の撤去・補強の有無による)
- コンセント・スイッチの位置変更:
- かがむ動作が難しい場合、低い位置にあるコンセントを高い位置に移設します。
- スイッチを低い位置(床から80cm程度)に移設すると、車椅子の方でも操作しやすくなります。
- 浴室・キッチン設備の調整:
- 浴槽の跨ぎ高さを低くしたり、手すりを組み合わせたりして出入りしやすくします。
- システムキッチンの高さを、使用する方の身長や車椅子の使用に合わせて調整します。
4. 感覚の変化(温度など)に対応するリフォーム
- 断熱リフォーム:
- 窓を二重窓や複層ガラスに変更する、壁や床、天井に断熱材を入れるなど、家全体の断熱性能を高めることで、部屋間の温度差を小さくし、ヒートショックのリスクを減らします。
- 費用目安: 数十万円〜数百万円(範囲による)
- 暖房設備の設置:
- 浴室や脱衣所に暖房器具を設置します。特に浴室暖房乾燥機は、入浴前の予備暖房、入浴後の乾燥、洗濯物乾燥など多機能で人気があります。
- 費用目安: 浴室暖房乾燥機設置で10万円〜30万円程度(本体価格、設置工事費含む)
リフォーム費用の目安と公的支援制度
バリアフリーリフォームにかかる費用は、工事の内容や規模によって大きく異なります。一般的な目安は以下の通りです。
- 手すりの設置: 数千円〜数万円/箇所
- 段差解消(スロープ設置、敷居撤去など): 数万円〜10万円程度/箇所
- 扉の変更(開き戸→引き戸): 10万円〜30万円程度/箇所
- 浴室の改修(ユニットバス交換など): 50万円〜150万円程度
- トイレの改修(便器交換、手すり設置など): 10万円〜50万円程度
- 廊下・階段の改修(手すり、滑り止め、照明など): 数十万円〜100万円程度
【重要なポイント】公的支援制度の活用
高齢者のバリアフリーリフォームには、費用負担を軽減するための公的支援制度があります。
- 介護保険の住宅改修費支給:
- 要支援または要介護認定を受けている方が対象です。
- 自宅のバリアフリー改修にかかる費用の一部(原則9割)が支給されます。
- 支給限度額は、原則として対象者一人につき生涯で20万円までです。
- 対象となる工事内容(手すり設置、段差解消、滑り止め床材変更、扉の変更、洋式便器への交換など)が決まっています。
- 利用には、事前に市区町村やケアマネジャーへの申請が必要です。工事着工前に申請し、承認を得る必要があります。
- 各自治体独自の補助金制度:
- お住まいの市区町村によっては、高齢者や障がいのある方向けの住宅改修補助金制度を設けている場合があります。
- 介護保険と併用可能な場合や、介護保険の対象とならない工事も対象となる場合があります。
- 詳細は各自治体の窓口(福祉課や建築課など)にご確認ください。
これらの制度を上手に活用することで、リフォーム費用の負担を大きく減らすことができます。まずは担当のケアマネジャーや、お住まいの市区町村の窓口に相談してみることをお勧めします。
信頼できるリフォーム業者の選び方
身体機能の変化に合わせたバリアフリーリフォームを成功させるためには、信頼できる業者選びが非常に重要です。
- 高齢者向けリフォームの実績があるか: バリアフリー工事の経験が豊富な業者を選びましょう。利用される方の身体状況や生活スタイルに合わせた提案ができるかどうかがポイントです。
- 親身に相談に乗ってくれるか: こちらの要望だけでなく、親御さんの状態や生活状況をしっかりヒアリングし、プロの視点から適切なアドバイスをしてくれる担当者がいるかを確認しましょう。身体機能の変化に合わせて、将来を見据えた提案をしてくれるかも重要です。
- 複数の業者から見積もりを取る: 複数の業者に見積もりを依頼し、内容や費用、担当者の対応などを比較検討しましょう。費用の内訳が明確かどうかも確認が必要です。
- 連絡や報告が丁寧か: 工事中の連絡や進捗報告が丁寧な業者を選ぶと安心です。
インターネットでの情報収集はもちろん、地域の福祉センターや、リフォーム関連の相談窓口などで情報を得るのも良いでしょう。
まとめ
ご両親の加齢による身体機能の変化に合わせたバリアフリーリフォームは、安全で快適な自宅での暮らしを長く続けるために非常に有効な手段です。視力や筋力、バランス感覚といった機能の変化が、ご自宅のどこにリスクを生むのかを理解し、手すりの設置、段差の解消、扉の変更、照明や断熱改修など、適切な対策を計画的に行うことが大切です。
リフォームには費用がかかりますが、介護保険の住宅改修費支給をはじめとする公的な支援制度を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。まずは、ご家族で話し合い、親御さんの現在の状況や将来のことも見据えながら、どのようなリフォームが必要か検討してみてください。
そして、安心して任せられる信頼できる業者を見つけ、相談しながら進めていくことが、バリアフリーリフォーム成功への鍵となります。
この記事が、ご両親の安全と快適な暮らしを実現するための第一歩となれば幸いです。