安全な家へ!高齢者の段差解消バリアフリーリフォーム 費用と対策
ご自宅には、ほんの少しの段差でも、高齢の方にとっては大きなつまずきの原因となる危険な場所が潜んでいます。特に加齢とともに身体機能が変化すると、これまで気にも留めなかった小さな段差が、転倒事故につながるリスクを高めてしまうのです。
大切なご家族が安全に、そしていつまでも快適に自宅で過ごせるように、段差解消のバリアフリーリフォームを検討することは非常に有効な手段です。ここでは、高齢者のご自宅における段差解消の重要性や、具体的な対策、費用、利用できる制度について分かりやすくご説明します。
なぜ高齢者の段差解消リフォームが重要なのか
高齢者の転倒事故は、骨折などの大きな怪我につながりやすく、その後の生活の質を著しく低下させる可能性があります。自宅内での転倒事故は非常に多く、特に段差はつまずきや踏み外しによる転倒の主な原因の一つです。
段差を解消することで、家の中での移動がスムーズになり、転倒のリスクを大幅に減らすことができます。これは単に安全性を高めるだけでなく、ご本人が安心して自由に動き回れるようになり、自立した生活を長く続けることにもつながります。
高齢者の自宅に潜む段差リスクと対策箇所
ご自宅の中で、高齢の方がつまずきやすい、または危険を感じやすい段差は、様々な場所に存在します。主な箇所とそれぞれの具体的なリフォーム対策、そして費用目安を見ていきましょう。
1. 玄関・上がりかまち
- リスク: 玄関の上がりかまちは、自宅で一番大きな段差である場合が多く、靴を脱ぎ履きする際にバランスを崩しやすい場所です。
- 対策:
- 式台や踏み台の設置: 上がりかまちの段差を複数に分けることで、一度に大きく足を上げる必要がなくなります。手すりを併設するとより安全です。
- スロープの設置: 車いすを使用する場合や、より段差を緩やかにしたい場合に有効です。設置場所や勾配を考慮する必要があります。
- 段差解消機の設置: 費用は高額になりますが、安全かつ確実に昇降できます。
- 費用目安:
- 式台・踏み台の設置(手すり含む):数万円~10万円程度
- 簡易スロープ設置:数万円~
- 本格的なスロープ設置・段差解消機:数十万円~
2. 室内(部屋間の敷居、廊下、浴室入口など)
- リスク: 部屋の境目にある敷居や、カーペットとフローリングの境目など、小さな段差でも高齢の方にとってはつまずきやすい箇所です。浴室入口の段差も、濡れた足元と相まって危険です。
- 対策:
- 敷居の撤去・段差解消材の設置: 敷居をなくしフラットにするか、段差解消用の緩やかな勾配の部材を設置します。
- 床全体のバリアフリー化: 大規模なリフォームになりますが、廊下や部屋全体の床をフラットにすることで、家全体の移動が安全になります。
- 浴室ドア改修と床のかさ上げ: 浴室の入り口段差を解消するため、ドアの種類を変更したり(開き戸から引き戸など)、浴室の床をかさ上げしたりする工事です。
- 費用目安:
- 敷居の段差解消材設置:数千円~数万円(箇所による)
- 敷居の撤去・床補修:数万円~(箇所による)
- 浴室入口段差解消(ドア改修含む):10万円~30万円程度
3. 階段
- リスク: 上り下りの際にバランスを崩しやすく、踏み外しのリスクが高い場所です。特に傾斜がきつい階段や、手すりがない場合は危険が増します。
- 対策:
- 手すりの設置: 片側または両側に設置することで、身体を支えながら安全に昇降できます。
- 滑り止め材の設置: 各段の端に滑り止めを取り付けます。
- 段鼻の視認性向上: 段の端を色を変えるなどして分かりやすくします。
- 階段昇降機の設置: 自力での階段の昇り降りが困難な場合に有効です。費用は高額になります。
- 費用目安:
- 手すり設置:数万円~20万円程度(長さや形状による)
- 滑り止め・段鼻改修:数万円~
- 階段昇降機:数十万円~100万円以上
4. 庭・アプローチ
- リスク: 玄関までのアプローチにある階段や、庭への段差は、屋外での転倒リスクを高めます。雨などで濡れるとさらに滑りやすくなります。
- 対策:
- スロープの設置: アプローチや庭への階段にスロープを設置します。手すりも併設すると良いでしょう。
- 舗装材の変更: 滑りにくい素材に変更します。
- 費用目安:
- スロープ設置(材質や規模による):10万円~数十万円
※上記費用目安は一般的なものであり、住宅の構造、採用する工法や素材、業者によって大きく異なります。
段差解消リフォームに使える公的支援制度
バリアフリーリフォーム、特に段差解消に関する工事には、経済的な負担を軽減するための公的な支援制度があります。
1. 介護保険の住宅改修費
要支援または要介護の認定を受けている方が対象です。自宅で安全に生活するためのバリアフリー改修(段差解消、手すり設置など)にかかる費用の一部が支給されます。
- 支給限度額: 原則として、対象となる住宅改修費用20万円までに対し、その費用の9割(所得によっては8割または7割)が支給されます。つまり、最大18万円(または16万円/14万円)の支給を受けられます。
- 手続き: 改修前に市区町村に申請し、承認を得る必要があります。担当のケアマネジャーに相談しながら進めるのが一般的です。
2. 自治体独自の補助金制度
お住まいの市区町村によっては、高齢者や障がいのある方のためのバリアフリーリフォームに対して、独自の補助金制度を設けている場合があります。介護保険の対象とならない場合や、介護保険の支給額を超過する場合でも利用できることがあります。
- 情報収集: 各自治体のウェブサイトや窓口で確認が必要です。
これらの制度を上手に活用することで、費用負担を抑えながら必要なリフォームを行うことができます。
信頼できるリフォーム業者の選び方
バリアフリーリフォームは、単に段差をなくすだけでなく、利用する方の身体状況や生活動線を考慮した専門的な知識が必要です。信頼できる業者を選ぶためのポイントをご紹介します。
- バリアフリーリフォームの実績: 高齢者向けの改修工事やバリアフリーリフォームの経験が豊富な業者を選びましょう。実績のある業者は、安全面や使いやすさに関するノウハウを持っています。
- 丁寧なヒアリングと提案力: ご本人やご家族の状況、普段の生活、具体的な困りごとなどを丁寧に聞き取り、それに基づいた最適な提案をしてくれるかを確認しましょう。一方的な提案ではなく、いくつかの選択肢を示してくれる業者が望ましいです。
- 見積もりの明確さ: 工事内容や費用について、詳細かつ分かりやすい見積もりを提示してくれるかを確認します。追加費用が発生する可能性についても事前に説明があるか確認しましょう。
- 公的制度への知識: 介護保険や自治体補助金の利用について詳しく、申請手続きのアドバイスやサポートをしてくれる業者だと、手続きの負担が軽減されます。
- 契約前の確認: 見積もり内容、工事期間、支払い条件、アフターフォローなどをしっかりと確認し、納得した上で契約を結びましょう。
複数の業者から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
まとめ
高齢者の自宅における段差解消リフォームは、転倒事故を防ぎ、安全で快適な暮らしを実現するために非常に効果的です。玄関、室内、階段など、様々な場所に潜む段差リスクに対して、適切な対策を行うことで、ご家族皆様が安心して過ごせる住まいになります。
リフォームを検討する際は、まず専門知識のある業者に相談し、自宅の状況やご家族のニーズに合った具体的な提案を受けることが大切です。また、介護保険や自治体の補助金制度も活用できる場合がありますので、情報収集を行い、賢くリフォームを進めましょう。
早めの対策が、将来の安心につながります。大切なご家族のために、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。