これで安心!高齢者のバリアフリーリフォームで失敗しないためのチェックポイント
高齢のご家族のために、自宅のバリアフリーリフォームをご検討されている方も多いかと思います。将来の安心な暮らしのために、リフォームは非常に有効な手段です。
しかし、いざリフォームを進めようとすると、「どこから手をつければ良いのか分からない」「どんな点に注意すれば良いのだろう」といった疑問や不安が出てくることもあるでしょう。また、限られた時間の中で情報収集を効率的に行いたいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
バリアフリーリフォームは、計画や内容によっては、かえって使い勝手が悪くなったり、数年後にやり直しが必要になったりと、後悔につながるケースも残念ながら存在します。
この記事では、バリアフリーリフォームでよくある失敗例と、そうした失敗を避けるためにぜひ押さえておきたいチェックポイントを分かりやすく解説します。大切なご家族のために、安全で快適な住まいを実現するための参考にしていただければ幸いです。
バリアフリーリフォームで「よくある失敗」とは?
まずは、どのようなケースでリフォームが期待通りにならなかったり、後悔してしまったりすることがあるのか、具体的な例を見てみましょう。
- ご本人の意見が十分に反映されなかった 「親のために良かれと思って」とご家族主導で計画を進めた結果、実際にリフォームした場所が、高齢者ご本人の体の状態や生活習慣に合わず、使いにくいものになってしまった、というケースがあります。どんなに良いリフォームでも、使う方が快適でなければ意味がありません。
- 将来の変化を見据えていなかった 今の体の状態に合わせてリフォームしたものの、数年後に介護度が進んだ際に、再度工事が必要になったり、想定していた使い方ができなくなったりすることがあります。例えば、今は手すりがあれば大丈夫でも、将来車椅子を使う可能性があるか、といった視点が抜けているケースです。
- 費用を抑えすぎて必要な改修ができなかった 予算に限りがある中で、必要な箇所全ての改修ができなかったり、本来設置した方が安全な設備(例えば浴室の暖房乾燥機によるヒートショック対策など)を見送ってしまったりするケースです。安全や快適性に関わる部分は、安易に妥協しないことが重要です。
- デザインや最新設備にこだわりすぎた おしゃれな内装にしたい、最新の設備を導入したい、という気持ちから、本来の目的である「安全で使いやすいこと」がおろそかになってしまうことがあります。例えば、滑りやすい光沢のある床材を選んでしまったり、操作が複雑な設備を入れてしまったりなどです。
- 業者選びやコミュニケーションが不十分だった バリアフリーリフォームの実績が少ない業者を選んでしまったり、工事内容や費用について業者との間で十分な確認ができなかったりすると、仕上がりに納得がいかなかったり、追加費用が発生したりといったトラブルにつながることがあります。
こうした失敗例は、事前の準備や確認が不足していた場合に起こりやすいものです。
後悔しないためのバリアフリーリフォーム計画のチェックポイント
では、上記の失敗を避けるためには、どのような点に注意してリフォームを進めれば良いのでしょうか。計画から業者選びまで、段階ごとにチェックポイントを見ていきましょう。
【チェックポイント1】 計画段階:家族みんなで話し合い、将来を見据える
- 高齢者ご本人・介護者の意向を丁寧に聞く: どのような点で困っているのか、リフォームでどうなりたいのかを、ご本人や普段介護されている方からしっかりと聞き取りましょう。これが最も重要な出発点です。
- ケアマネジャーや専門家に相談する: もし介護保険サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。体の状態や必要な支援について専門的なアドバイスがもらえます。また、地域の包括支援センターなども相談に乗ってくれます。
- 将来の介護度進行や家族の変化も考慮に入れる: 今後、車椅子の使用が必要になる可能性はあるか? 家族構成に変化はあるか? など、少し先の未来も予測して、 adaptable(適応可能)なリフォーム計画を立てましょう。例えば、手すりを取り付ける壁は、将来的に介護リフトの設置も可能な補強をしておく、といった視点です。
- 生活動線を具体的にシミュレーションする: 「朝起きてから寝るまで、家の中でどのように移動するか」をイメージしてみましょう。リビングからトイレ、寝室から浴室など、よく使う場所の移動に危険な箇所はないか、スムーズに動けるかを確認します。
【チェックポイント2】 内容決定段階:安全と使いやすさを最優先に
- 箇所ごとの「必要な機能」を明確にする: 例えば、浴室なら「滑りにくい床」「出入りしやすい高さの浴槽」「掴まりやすい手すり」、トイレなら「立ち座りを助ける手すり」「広さの確保」など、場所ごとに安全・快適な暮らしに不可欠な機能をリストアップしてみましょう。
- 見た目だけでなく「実際の使いやすさ」を確認する: 手すりの太さや形状、床材の質感(滑りにくさ、硬さ)、扉の開閉のしやすさなど、カタログや写真だけでなく、可能であれば実物を見て触って確認することが理想です。
- 明るさや色にも配慮する: 高齢になると視力が低下したり、色の識別が難しくなったりすることがあります。安全な移動のために、廊下や階段、玄関などの照明は明るく、スイッチは操作しやすい場所に設置しましょう。段差や手すりの色を周囲と変えて視認性を高める工夫も有効です。
- 安さだけで判断しない: 極端に安い見積もりには注意が必要です。適切な材料や十分な工事が含まれているか、内容をしっかり確認しましょう。必要な改修を全て行うための適正な費用を見積もることが大切です。
【チェックポイント3】 業者選び段階:信頼できるパートナーを見つける
- バリアフリーリフォームの実績が豊富な業者を選ぶ: バリアフリーに関する専門知識やノウハウを持っているか、似たようなリフォーム事例を多く手がけているかを確認しましょう。ケアマネジャーや他の専門家から紹介を受けるのも一つの方法です。
- 複数の業者から相見積もりを取る: 少なくとも2~3社から見積もりを取り、工事内容、費用、工期、担当者の対応などを比較検討しましょう。見積もりの内容が分かりやすいかどうかも重要な判断基準です。
- 担当者とのコミュニケーションを確認する: 疑問や不安な点を気軽に質問できるか、分かりやすく丁寧に説明してくれるかなど、担当者との相性も大切です。こちらの要望をしっかりと聞き、プロとしての提案をしてくれる業者を選びましょう。
- 契約内容と保証を確認する: 工事の範囲、追加費用が発生する可能性、工期、支払い条件、工事後の保証内容などを契約書でしっかり確認しましょう。口約束だけでなく、書面に残すことが重要です。
費用と工期について(一般的な目安と注意点)
バリアフリーリフォームの費用や工期は、工事内容や範囲によって大きく異なります。失敗しないためには、ある程度の目安を知っておくことも大切です。
- 費用目安:
- 手すりの設置(1箇所):数万円~10万円程度
- 段差解消(手すり含む):10万円~30万円程度
- 扉の交換(開き戸から引き戸へ):10万円~30万円程度
- 浴室全体改修(ユニットバス交換、手すり、段差解消など):50万円~150万円以上
- トイレ全体改修(手すり、スペース確保、便器交換など):20万円~50万円以上
- 上記はあくまで目安であり、建物の構造や設備のグレードによって大きく変動します。
- 工期目安:
- 手すり設置や段差解消など部分的な工事:1日~数日
- 浴室やトイレなどの全体改修:数日~1週間程度
- 複数の箇所をまとめて行う場合:1週間~2週間程度
- 建物の状況や工事内容、天候などによって工期は前後することがあります。
失敗しないためには、「この部分のリフォームにはだいたいこれくらいの費用がかかる」という目安を知り、複数の見積もりを比較して、内容に見合った適正価格であるかを見極めることが重要です。
活用できる公的支援制度(補助金・介護保険)の注意点
バリアフリーリフォームには、介護保険や各自治体の補助金制度などが活用できる場合があります。これらの制度を利用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があるため、必ず確認しましょう。
ただし、制度を利用する際にはいくつかの注意点があります。
- 事前申請が必要な場合が多い: 工事着工前に申請手続きを完了させておく必要があります。工事後に申請しても認められないことがほとんどです。
- 対象となる工事や条件が決まっている: 制度ごとに、対象となるリフォーム箇所や工事内容、申請者の要件などが細かく定められています。
- 支給額に上限がある: 介護保険の住宅改修費用は、原則として一人あたり生涯20万円(自己負担割合に応じた額)が上限です。自治体の補助金も上限額が設定されています。
制度の利用を検討している場合は、まず担当のケアマネジャー(介護保険を利用している場合)や、お住まいの市区町村の窓口に相談してみましょう。信頼できるリフォーム業者であれば、これらの制度に関する情報提供や申請のサポートを行ってくれる場合もあります。
まとめ
高齢のご家族が自宅で安全かつ快適に過ごせるようにするためのバリアフリーリフォームは、非常に有効で意義のある投資です。しかし、せっかくのリフォームで後悔しないためには、事前の準備と計画、そして信頼できる業者選びが何よりも重要になります。
この記事でご紹介したチェックポイントを参考に、ご家族皆様でしっかりと話し合い、将来を見据えた計画を立て、複数の視点から検討を進めてください。
もしリフォームに関して疑問や不安な点があれば、一人で抱え込まずに、ケアマネジャーや地域の相談窓口、そしてバリアフリーリフォームの実績が豊富な専門業者に相談してみましょう。適切なサポートを得ながら、安全で快適な住まいを実現し、ご家族皆様が安心して暮らせる未来を築いていきましょう。