高齢者のバリアフリーリフォームで後悔しないために 知っておきたい失敗例と回避策
ご両親のためにバリアフリーリフォームを検討されているのですね。安全で快適な暮らしを実現するためのリフォームは、期待が大きい一方で、「本当にこれで良いのだろうか」「後から後悔しないか」といった不安もあるかと思います。特に、リフォームに関する知識が少ないと、どんな点に注意すれば良いか迷ってしまうこともあるでしょう。
バリアフリーリフォームを成功させるためには、単に設備を変えるだけでなく、そこに住む方の体の状態や将来の変化、そして家全体の使いやすさを考慮することが重要です。しかし、こうした視点が欠けると、思わぬ失敗をしてしまうこともあります。
この記事では、高齢者のバリアフリーリフォームでありがちな失敗例とその回避策について具体的にご紹介します。失敗例から学ぶことで、より確実で満足のいくリフォーム計画を立てるヒントになれば幸いです。
バリアフリーリフォームでありがちな失敗例
まずは、多くの方が経験しがちなバリアフリーリフォームの失敗例を見ていきましょう。
失敗例1:将来の体の変化を見誤った計画
- よくあるケース: 現在は歩けるので手すりだけで十分と考えていたが、数年後に体の状態が変わり、車椅子が必要になった。しかし、廊下や部屋の入口幅が狭く、新たに大規模な改修が必要になった。
- なぜ失敗?: バリアフリーリフォームは、一度行えば長く使うものです。今の状態だけでなく、数年後、10年後と、体の機能がどのように変化する可能性があるかを十分に考慮していなかったために、再度リフォームが必要になったり、不便を感じたりすることになります。
失敗例2:必要な箇所全体ではなく、部分的な改修に留めてしまった
- よくあるケース: 浴室だけをユニットバスに交換したが、脱衣所との段差が残ってしまった。または、手すりを設置したが、玄関から廊下、廊下から部屋への一連の動線がつながっておらず、結局使いにくかった。
- なぜ失敗?: 家の中での移動は、いくつかの場所を経て行われます。例えば、トイレに行くには、部屋を出て廊下を通り、トイレのドアを開けて入るという一連の動作が必要です。特定の場所だけを改修しても、その前後の移動がスムーズでなければ、全体としての安全性や快適性は向上しません。
失敗例3:使う人の体の状態や使い勝手に合っていない設備選び・設置
- よくあるケース: インターネットやカタログを見て良さそうだと思い、手すりを取り付けたが、実際に使う親御さんの身長や筋力、よく使う腕などに合っておらず、かえって使いにくかった、または位置が低すぎたり高すぎたりした。
- なぜ失敗?: バリアフリー設備は、使う方の身体状況に合わせて調整されてこそ効果を発揮します。一般的な情報だけで判断すると、個別具体的な状況に合わないものを選んでしまいがちです。
失敗例4:滑りやすい床材を選んでしまった
- よくあるケース: デザインを優先してツルツルした表面の床材を選んだ結果、少し濡れただけで滑りやすくなり、転倒の危険性が増してしまった。
- なぜ失敗?: 高齢者の転倒は大きな怪我につながりやすいです。バリアフリーの観点では、デザイン性だけでなく、安全性(滑りにくさ、硬すぎない素材など)を考慮した床材選びが非常に重要になります。
失敗例5:補助金や介護保険の制度を十分に活用できなかった
- よくあるケース: リフォーム後に補助金の制度を知り、「事前に知っていればもっと費用を抑えられたのに」と後悔した。または、介護保険の住宅改修費支給制度の対象となる工事内容や手続きを理解していなかった。
- なぜ失敗?: バリアフリーリフォームには、国や自治体、介護保険による様々な支援制度があります。これらの制度を事前に調べて適切に活用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。情報収集が不十分だと、利用できたはずの制度を見逃してしまうことになります。
失敗例6:バリアフリーの知識が乏しい業者を選んでしまった
- よくあるケース: 知り合いの工務店に頼んだが、バリアフリーに関する専門的な知識や経験が不足しており、最適な提案が受けられなかったり、施工に不備があったりした。
- なぜ失敗?: バリアフリーリフォームは、単なる住宅リフォームとは異なる専門知識が必要です。高齢者の身体的な特徴や、将来の変化に対応するための設計、そして利用できる公的制度に関する知識が豊富な業者を選ぶことが、成功の鍵となります。
失敗を防ぐための回避策
これらの失敗を避けるためには、どのように計画を進めれば良いのでしょうか。
対策1:専門家やご家族で十分に話し合う
ケアマネージャーや、バリアフリーに詳しい建築士などの専門家に相談しましょう。ご本人の体の状態を正確に把握し、将来の変化も予測した上で、どのようなリフォームが必要かアドバイスをもらうことができます。また、ご家族だけでなく、実際に住む親御さんの意見や希望をしっかりと聞き、一緒に話し合うことが何よりも大切です。
対策2:家全体の「動線」と将来を見据えた計画を立てる
特定の場所だけでなく、家の中での移動全体(動線)を考慮した計画を立てましょう。玄関からリビング、浴室、トイレ、寝室など、日常的に移動するルート全体をチェックし、一連の動きがスムーズになるように改修を検討します。また、今は必要なくとも、将来的に必要になる可能性がある工事(例えば、車椅子でも通れる幅の確保や、将来的なエレベーター設置スペースの確保など)についても、リフォーム会社と相談してみると良いでしょう。
対策3:ショールームなどを活用し、実際に体験してみる
手すりの高さや設置場所、扉の開閉方法、床材の質感などは、カタログだけでは分かりにくいものです。可能であれば、ショールームで実際に設備を見たり触れたり、体験したりすることで、より使いやすいものを選ぶことができます。リフォーム会社に相談すれば、ショールームを紹介してもらえる場合もあります。
対策4:安全性に配慮した素材選びを徹底する
床材は、滑りにくく、クッション性のある素材を選びましょう。また、照明は、明るさを確保しつつ、直接光が目に入りにくいものや、足元をしっかり照らすフットライトなどを検討します。スイッチやコンセントも、かがまなくても操作できる位置に設置するなど、細部まで配慮することで安全性が高まります。
対策5:利用できる公的な支援制度を事前に確認する
リフォーム計画の初期段階で、国や自治体の補助金制度、介護保険の住宅改修費支給制度について情報収集を行いましょう。ケアマネージャーやリフォーム会社に相談すれば、利用できる制度や申請手続きについて詳しく教えてもらうことができます。これらの制度を上手に活用することで、費用負担を軽減しながら必要なリフォームを行うことが可能です。
対策6:バリアフリーリフォームの実績が豊富な信頼できる業者を選ぶ
バリアフリーリフォームは専門性が高いため、実績と経験が豊富なリフォーム会社を選ぶことが非常に重要です。複数の業者から見積もりを取り、提案内容や担当者の対応を比較検討しましょう。親御さんの状態や家族の要望を丁寧に聞き取り、将来のことまで考えた提案をしてくれるか、具体的な施工事例を見せてくれるかなどを確認することで、信頼できる業者を見つけやすくなります。
まとめ:失敗例を知って、後悔のないバリアフリーリフォームを
高齢者のバリアフリーリフォームは、ご両親の安全と快適な暮らしを守るために大変有効な手段です。今回ご紹介した失敗例とその回避策を参考にしていただくことで、より具体的で現実的なリフォーム計画を立てることができるでしょう。
計画の際は、ご本人の現在の状態だけでなく、将来の体の変化を見据えること、家全体の動線を考慮すること、そして何よりも、実際に住む親御さんの意見を尊重することが大切です。
信頼できるリフォーム会社やケアマネージャーといった専門家と連携しながら、後悔のない、そして心から「リフォームしてよかった」と思える安全快適な住まいを実現してください。