これでスムーズ!高齢者の扉バリアフリーリフォーム 開き戸から引き戸への変更と費用目安
高齢のご家族の安全と快適さを守る扉のバリアフリーリフォーム
ご自宅で高齢のご家族が安全に、そして快適に過ごすためには、生活動線上のバリアをなくすことが非常に重要です。特に、普段何気なく使っている「扉」は、高齢になるにつれて思わぬ負担や危険につながることがあります。
例えば、開き戸は開閉時に体の前後スペースが必要だったり、扉自体が重く感じられたり、とっさに手を離すと閉まってしまう危険性もあります。また、ドアノブを握って回す動作が難しくなる方もいらっしゃいます。
このような扉に関する課題を解決するのが、バリアフリーリフォームです。この記事では、高齢のご家族のために検討したい扉のバリアフリーリフォームについて、具体的な方法や期待できる効果、気になる費用や利用できる制度について分かりやすくご説明します。
なぜ扉のバリアフリーリフォームが必要なのでしょうか?
扉のバリアフリー化は、主に以下の目的のために行われます。
- 転倒リスクの軽減: 開き戸を開閉する際に後ろに下がる、または前に出る動作は、バランスを崩しやすく転倒につながる可能性があります。
- 移動の負担軽減: ドアノブを握って回す、扉を押し引きするといった動作は、手や腕の力が弱くなった方には負担になります。
- 車椅子での通行の容易化: 標準的な開き戸の幅や開閉スペースでは、車椅子での通行が困難な場合があります。
- 介護のしやすさ向上: 介護者が高齢者の移動をサポートする際に、扉がスムーズに開閉できると介助が楽になります。
- 空間の有効活用: 引き戸などは開閉に必要なスペースが少なく、廊下や居室の空間を有効に使えます。
扉のバリアフリーリフォーム 具体的な方法
扉のバリアフリーリフォームには、いくつかの方法があります。中でも、最も一般的で効果が高いとされるのが「開き戸から引き戸への変更」です。
1. 開き戸を引き戸に変更する
現在お使いの開き戸を、横にスライドして開閉する引き戸に変更するリフォームです。
- メリット:
- 開閉時に前後のスペースが不要で、廊下や部屋を広く使えます。
- 軽い力でスムーズに開閉でき、高齢者の方でも扱いやすいです。
- 扉を開けたままでも邪魔にならず、風通しを良くしたり、見守りが必要な部屋に使ったりするのに適しています。
- 車椅子での通行を考慮して、扉幅を広くすることも比較的容易です。
- 種類:
- 片引き戸: 壁に沿って扉が1枚スライドするタイプ。最も一般的です。
- 引込み戸: 開けたときに扉が壁の中に納まるタイプ。見た目がすっきりしますが、壁内部の工事が必要です。
- 上吊り式引き戸: レールを床ではなく上枠に取り付けるタイプ。床に段差ができず、掃除もしやすいメリットがあります。
開き戸から引き戸への変更は、扉本体の交換だけでなく、多くの場合、壁の一部を撤去・補強したり、新しい枠を取り付けたりする工事が必要になります。
2. その他の扉リフォーム
- 折れ戸やアコーディオンカーテンへの変更: 浴室の入り口など、あまりスペースが取れない場所に適しています。ただし、折れ戸は構造上、開閉時に少し力が必要な場合や、指を挟むリスクがないか確認が必要です。
- 扉ノブ(取っ手)の交換: 握力の弱い方でも掴みやすいレバーハンドルへの交換は、比較的簡単にできるリフォームです。鍵付きのものや、非常時に外から開けられるタイプなどもあります。
- 扉幅の拡張: 車椅子での通行を想定する場合、扉の有効幅を80cm以上にするのが目安とされています。壁の構造にもよりますが、既存の扉枠を広げる工事を行うことがあります。
- 扉の撤去: 必要に応じて、部屋と部屋の間にある扉自体を撤去してしまうという選択肢もあります。ただし、プライバシーや冷暖房効率への配慮が必要です。
扉のバリアフリーリフォーム 費用目安と工期
扉のバリアフリーリフォームにかかる費用と工期は、リフォームの内容や、現在の扉の種類、設置場所の構造などによって大きく異なります。あくまで一般的な目安としてご参考ください。
- 開き戸から引き戸への変更: 1箇所あたり 20万円~50万円程度 (扉本体の費用、撤去・設置工事費、壁の補修費などを含みます。壁内部の構造によってはさらに高額になることもあります。簡易的なリフォーム方法であれば、10万円台で行えるケースもあります。)
- 扉ノブの交換(レバーハンドル化): 1箇所あたり 数千円~数万円 (ノブの価格や設置の難易度によります)
- 扉幅の拡張: 1箇所あたり 30万円~80万円程度 (壁の構造補強や間取りの変更が必要な場合、高額になる傾向があります)
- 工期:
- 開き戸から引き戸への変更: 1日~3日程度 (壁の工事が必要な場合)
- 扉ノブ交換: 数時間
正確な費用と工期を知るためには、専門の業者に現場を見てもらい、見積もりを取ることが重要です。
公的支援制度の活用:介護保険や補助金
バリアフリーリフォームには、国の介護保険制度や、お住まいの自治体による独自の補助金制度が利用できる場合があります。これらの制度を賢く活用することで、リフォーム費用の負担を軽減できます。
1. 介護保険による住宅改修費の支給
要支援または要介護の認定を受けている方が、自宅に手すりを取り付けたり、段差を解消したりするなどのバリアフリー改修を行う場合に、その費用の一部が支給される制度です。
扉に関する改修では、主に以下の工事が支給対象となる可能性があります。
- 引き戸等への扉の取替え: 開き戸から引き戸への変更、折れ戸等への変更。
- 扉の撤去: 扉を取り外す工事。
- 戸車の設置等: 滑りを良くするための戸車の設置や、扉の軽い力での開閉を可能にするための改造。
- レバーハンドル等への取替え: 握力の弱い方でも開けやすいドアノブへの交換。
支給対象となる改修費の上限は 20万円 です(原則として、自己負担割合に応じた金額が支給されます)。申請手続きはケアマネジャーなどを通じて行いますので、まずは担当のケアマネジャーにご相談ください。
2. 自治体独自の補助金
お住まいの市区町村によっては、高齢者向けの住宅改修に対する独自の補助金制度を設けている場合があります。支給条件や金額は自治体によって異なりますので、役所の高齢者福祉担当窓口やリフォーム業者に確認してみましょう。
制度をうまく活用するためにも、リフォームの計画段階でこれらの情報収集を行うことが大切です。
信頼できるリフォーム業者の選び方
扉のバリアフリーリフォームを成功させるためには、信頼できる業者選びが重要です。以下のポイントを参考に、慎重に選びましょう。
- バリアフリーリフォームの実績が豊富か: 高齢者向けの改修実績が豊富な業者は、高齢者の体の状態や生活習慣を理解しており、適切な提案をしてくれます。
- 担当者の対応が丁寧か: 相談内容をしっかりと聞き、分かりやすい言葉で説明してくれるか。疑問点にも誠実に答えてくれるかを確認しましょう。
- 複数の業者から見積もりを取る: 1社だけでなく、複数の業者から見積もりを取り、内容や費用、工期を比較検討することが大切です。その際、詳細な見積もりを出してくれるか、追加費用の可能性について説明があるかも確認しましょう。
- 契約前に工事内容と費用を十分に確認する: 口頭だけでなく、契約書や見積書で工事内容、費用、工期などを明確に確認しましょう。
可能であれば、過去にその業者を利用した人の声を聞いたり、インターネット上の評判を参考にしたりするのも良いでしょう。
まとめ
高齢のご家族が自宅で安全かつ快適に暮らすために、扉のバリアフリーリフォームは非常に有効な手段です。特に開き戸を引き戸に変更することは、移動の負担を減らし、転倒リスクを軽減する上で大きな効果が期待できます。
リフォームには費用がかかりますが、介護保険の住宅改修費支給制度や自治体の補助金を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。
扉のバリアフリーリフォームを検討される際は、まず専門の業者に相談し、ご家族の状況や自宅の構造に合った最適なプランを提案してもらいましょう。適切なリフォームを行うことで、大切なご家族の暮らしはより安全で快適になるはずです。