見落としがち!高齢者の家でつまずきやすい場所と安全対策リフォーム
親御さんのご自宅の安全について、「転んでしまわないか」と心配されている方は多いのではないでしょうか。特に、家の中で何気なく移動している時に、ちょっとした段差や障害物につまずいて転倒し、大けがにつながるケースも少なくありません。
高齢になるにつれて、筋力やバランス感覚が低下し、視力も変化するため、若い頃には気にならなかった場所が危険な箇所に変わることがあります。しかし、普段住み慣れたご自宅だからこそ、その危険性に気づきにくいという側面もあります。
この記事では、高齢者が自宅内でつまずきやすい代表的な場所と、それぞれの場所における具体的なリフォーム対策、費用目安、そして活用できる可能性がある公的支援制度についてご紹介します。大切な親御さんが、住み慣れたご自宅でこれからも安全に、そして安心して過ごせるよう、一緒に確認していきましょう。
なぜ家の中でつまずきやすいのか?
高齢者が家の中でつまずきやすくなる主な理由はいくつかあります。
- 身体機能の変化: 加齢により、足が上がりにくくなる、バランスを取りづらくなる、とっさの反応が遅れるといった変化が起こります。
- 視力の低下: 視界が狭くなったり、暗い場所が見えにくくなったりすることで、小さな段差や障害物を見落としやすくなります。
- 住環境: 昔ながらの日本の住宅には、部屋と部屋の間に敷居があったり、玄関に大きな段差があったりと、つまずきやすい構造が多く見られます。
- 物の配置: 家の中に物が増え、通路が狭くなったり、床に物が置かれていたりすることもつまずきの原因になります。
これらの要因が組み合わさることで、ご自宅の中でも思わぬ場所が危険地帯となるのです。
高齢者がつまずきやすい代表的な場所と対策
ご自宅の中で、特に注意が必要ないくつかの場所とそのリフォームによる安全対策をご紹介します。
1. 玄関
家への出入り口である玄関は、最もつまずきやすい場所の一つです。段差が大きい場合が多く、靴の脱ぎ履きでバランスを崩しやすい環境です。
- 課題: 高い段差、狭いスペース、手すりがない。
- リフォーム対策:
- 玄関内の段差解消: 玄関の土間と床の高さを可能な限り近づける工事や、段差を緩やかにする踏み台の設置。
- 手すりの設置: 玄関ドアの近くや、段差を上り下りする箇所に、縦型や横型の手すりを設置。
- ベンチの設置: 靴の脱ぎ履き時に座れるベンチを置くスペースを作る。
- 費用目安: 玄関の段差解消や手すり設置で10万円~30万円程度。工事の規模によって異なります。
- 工期: 1日~数日
2. 部屋の出入り口(敷居)
和室と廊下の境などにある「敷居」は、高さが数センチ程度でもつまずきの原因になります。特に絨毯などを敷いていると見えにくくなることもあります。
- 課題: 部屋間の敷居にある段差。
- リフォーム対策:
- 敷居の撤去・段差の解消: 敷居をなくし、床材をフラットにする。または、スロープ状の部材を取り付けて段差を解消する。
- 床材の変更: 段差解消に合わせて、滑りにくい床材に変更することも検討。
- 費用目安: 1箇所あたり数万円~10万円程度。
- 工期: 半日~1日
3. 廊下や居室の床
平らだと思われがちな廊下や部屋の床にも、危険は潜んでいます。
- 課題: コード類、絨毯の端、家具の配置、滑りやすい床材。
- リフォーム対策:
- 床材の変更: 滑りにくい加工が施されたフローリングやクッションフロアに変更する。
- バリアフリーコンセントの設置: 電化製品のコードが床を這わないよう、壁の高い位置にコンセントを増設する。
- 照明の改善: 廊下や部屋全体、特に隅々まで明るくなるように照明器具を増設または交換する。
- 費用目安: 床材変更は広さによるが、10万円~数十万円。コンセント増設は1箇所あたり数千円~1万円程度。照明は器具によるが、数千円~数万円。
- 工期: 床材変更は数日。コンセント・照明は半日~1日。
4. 浴室の入り口
浴室は水を使うため滑りやすい上に、脱衣所との間に段差があることが多く、ヒートショックのリスクも伴う危険な場所です。
- 課題: 高い段差、滑りやすい床、寒い。
- リフォーム対策:
- 浴室全体のリフォーム: 段差のないユニットバスに交換する。滑りにくい床材のバスユニットを選ぶ。
- 段差解消: 既存の浴室の段差にスロープを設置する。
- 手すりの設置: 浴槽の出入り口や洗い場、立ち上がる場所に手すりを設置する。
- 浴室暖房乾燥機の設置: 寒さを解消し、ヒートショックを予防する。
- 費用目安: 浴室全体のリフォームは50万円~100万円以上。部分的な段差解消や手すり設置は数万円~10万円程度。浴室暖房乾燥機は10万円~20万円程度。
- 工期: ユニットバス交換は4日~1週間程度。部分的な工事は1日~数日。
5. 階段
階段は段差が高く、足元が見えにくいため、転倒・転落のリスクが非常に高い場所です。
- 課題: 急な勾配、段差の高さ、手すりがない、暗い。
- リフォーム対策:
- 手すりの設置: 階段の片側または両側に連続した手すりを設置する。
- 滑り止め材の設置: 階段の踏み面に滑り止めシートやノンスリップ加工を施す。
- 照明の改善: 足元をしっかり照らす照明を設置する。段鼻(階段の先端)の色を変えて視認性を高める。
- 階段の勾配・段差の緩和: 可能であれば、階段の勾配を緩やかにし、段差を低くする大規模な改修。
- 費用目安: 手すり設置は数万円~10万円程度。滑り止めや照明は数千円~数万円。大規模な改修は数十万円~数百万円。
- 工期: 手すり・滑り止め・照明設置は1日~数日。大規模改修は数日~1週間以上。
リフォーム費用を抑えるために:公的支援制度の活用
バリアフリーリフォームには費用がかかりますが、高齢者の安全・安心な暮らしを支援するための公的な制度があります。
- 介護保険: 要支援または要介護認定を受けている方が、自宅で自立した生活を送るための特定のバリアフリーリフォーム(手すり設置、段差解消、滑り止め、引き戸等への扉交換など)を行う場合、上限額内で費用の9割または8割が支給される制度です。原則として、工事前に申請が必要です。
- 各自治体の補助金制度: お住まいの市区町村によっては、独自の高齢者向け住宅改修補助制度を設けている場合があります。介護保険の対象とならない工事や、上限額を超えた分の一部を補助してくれる制度など、内容は自治体によって異なります。
これらの制度はそれぞれ利用条件や申請方法が異なります。リフォームを検討する際は、担当のケアマネジャー(介護保険利用の場合)や、お住まいの自治体の窓口、またはリフォーム業者に相談して、利用できる制度を確認することをお勧めします。
信頼できるリフォーム業者の選び方
バリアフリーリフォームを成功させるためには、信頼できる業者選びが非常に重要です。
- バリアフリーリフォームの実績が豊富か: 高齢者の身体状況や生活スタイルに配慮した提案ができる業者を選びましょう。施工事例や担当者の知識・経験を確認することが大切です。
- 親身になって相談に乗ってくれるか: 一方的に決まったプランを提案するのではなく、親御さんの状態やご家族の要望をしっかり聞き、一緒に最適な方法を考えてくれる業者を選びましょう。
- 見積もりが明確で丁寧か: 工事内容や費用が分かりやすく提示され、不明な点がないか確認しましょう。安すぎる見積もりには注意が必要です。
- 介護保険や補助金制度に詳しいか: これらの制度の申請をサポートしてくれる業者だと、手続きがスムーズに進みます。
複数の業者から見積もりを取り、担当者と直接話して比較検討することをお勧めします。
まとめ
ご自宅の中には、普段気づきにくい「つまずきやすい場所」が潜んでいます。玄関、敷居、廊下、浴室、階段など、それぞれの場所の特性に応じたバリアフリーリフォームを行うことで、親御さんの転倒リスクを大きく減らすことができます。
リフォームには費用がかかりますが、介護保険や各自治体の補助金制度を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。
大切なのは、これらの危険箇所を認識し、早めに対策を講じることです。信頼できるリフォーム業者に相談し、親御さんがこれからも安全で快適に、住み慣れたご自宅で安心して暮らせる環境を整えていきましょう。