夜中のトイレも安心!高齢者の夜間転倒を防ぐバリアフリーリフォームと費用目安
高齢のご家族が自宅で安全に過ごされることは、同居されている方も、離れて暮らす方も共通の願いではないでしょうか。特に、夜間の自宅内移動は、暗さや眠気、体調の変化などから転倒のリスクが高まります。夜中にトイレに行く際や、寝室から水分を取りに行く際など、ほんの少しの移動が思わぬ事故につながることも少なくありません。
この記事では、高齢者の夜間における転倒リスクに焦点を当て、それを防ぐための具体的なバリアフリーリフォームについてご紹介します。どのようなリフォームが効果的なのか、費用はどのくらいかかるのか、また利用できる公的な支援制度についても解説しますので、ぜひご家族の安心・安全な暮らしのためにご検討ください。
なぜ夜間に転倒しやすいのか? 高齢者の夜間転倒リスク
高齢者が夜間に転倒しやすい要因はいくつかあります。
- 視力の低下: 加齢により暗闇での視力が低下し、小さな段差や障害物が見えにくくなります。
- 身体機能の低下: 筋力やバランス感覚の衰えにより、ふらつきやすくなります。急な動作に対応しきれないこともあります。
- 薬剤の影響: 服用している薬によっては、眠気やめまいを引き起こすことがあります。
- 睡眠状態: 目覚めたばかりは意識がはっきりせず、注意力が散漫になりがちです。
- 自宅環境: 昼間は何気ない場所でも、夜間の暗闇では危険な箇所(段差、滑りやすい床、適切な照明がない場所)が潜んでいます。特に、夜中のトイレなど急に起きて移動する際に、これらの要因が重なりリスクが高まります。
夜間転倒リスクが高い場所と具体的なリフォーム対策
夜間、高齢のご家族が頻繁に移動する可能性のある場所は、特に転倒リスクが高まります。主な場所と、それぞれに有効なバリアフリーリフォームを見ていきましょう。
1. 寝室から廊下・トイレへの移動経路
高齢のご家族が夜中に最もよく移動する場所です。安全な動線を確保することが重要です。
- 照明の設置・改善:
- 足元灯の設置: 廊下や階段の足元に、低い位置を照らす照明を設置します。常夜灯や人感センサー付きのものが便利です。
- 自動点灯式照明: 人が通ると自動で点灯するセンサー付き照明は、スイッチを探す手間がなく安全です。
- スイッチの場所と種類: スイッチは、寝室の出入り口付近や廊下の両端など、すぐに操作できる位置に設置します。面積の大きいワイドスイッチや、蓄光式スイッチなども分かりやすいでしょう。
- 手すりの設置:
- 廊下の壁面に連続した手すりを設置します。暗闇でもつかまる場所があることで、安心して移動できます。
- 握りやすく、設置高さが適切なものを選びます。
- 段差の解消:
- 部屋の敷居や、廊下と部屋の間のわずかな段差も夜間はつまずきの原因になります。スロープを設置するか、段差そのものをなくすリフォームを検討します。
- 床材の変更:
- 滑りにくい床材(例: ビニル床シート、コルクタイルなど)に変更することで、万が一ふらついても滑って転倒するリスクを減らせます。
2. トイレ
夜中のトイレは、高齢者の夜間転倒の最も一般的な原因の一つです。
- 照明:
- 十分な明るさの照明を設置します。入り口付近にスイッチを設けたり、人感センサー付きの照明にしたりすると便利です。
- 手すり:
- 立ち座りを補助するL型の手すりや、便器の両側に設置する跳ね上げ式の手すりなど、体の状態に合わせて設置します。
- トイレへのアプローチ部分にも手すりがあると、さらに安心です。
- ドアの変更:
- 開き戸から、開閉スペースが少なく緊急時にも外から開けやすい引き戸や折れ戸に変更するリフォームも有効です。
- 床材:
- 水滴などで滑りやすい床は、滑りにくい素材(タイル、ビニル床シートなど)に変更することを検討します。
3. 寝室
寝室自体にも、夜間の安全を高めるためのリフォームがあります。
- ベッドからの立ち上がり補助:
- ベッドサイドに手すり付きの立ち上がり補助具を設置したり、介護ベッド(高さ調整や背上げ機能付き)を導入したりするのも良い方法です。
- ベッドサイド照明:
- ベッドのすぐ近くで操作できる照明(スタンドライトや壁付け照明)があると、夜中に目が覚めてもすぐに明かりをつけられます。
4. 階段(夜間利用がある場合)
2階建て住宅で夜間も階段を利用する場合、転倒リスクはさらに高まります。
- 照明:
- 階段全体を均一に照らす照明と、各段の足元を照らすフットライトを組み合わせると安全です。
- 階段の上下両方にスイッチを設置したり、センサー付き照明にしたりします。
- 手すり:
- 両側に手すりを設置するのが理想的です。途切れることなく、最上段から最下段まで連続して設置します。
- 滑り止め:
- 階段の踏面に滑り止め加工を施したり、滑り止めシートを貼ったりします。
夜間転倒対策リフォームの費用目安
ご紹介したリフォームの費用は、工事内容や範囲、選ぶ製品のグレード、依頼する業者などによって大きく異なります。あくまで一般的な目安として参考にしてください。
- 手すりの設置:
- 数メートル程度の設置で、数万円~10万円程度
- 照明の設置・交換:
- 照明器具の費用+設置工事費で、数千円~数万円/箇所
- 配線工事が必要な場合は別途費用がかかります。
- 段差解消(スロープ設置や段差撤去):
- 簡易的なスロープ設置で数万円~、段差撤去や床のかさ上げなどで数万円~十数万円/箇所
- 床材の変更:
- 1畳あたり数千円~1万円程度(材料費+工事費)。張替え範囲によります。
- 開き戸から引き戸への変更:
- 既存枠を利用した簡易的なもので10万円~20万円程度
- 壁の撤去や補強が必要な本格的な工事では、30万円以上かかることもあります。
複数の箇所を同時にリフォームする場合、まとめて依頼することで費用が抑えられることもあります。正確な費用を知るためには、必ず専門業者に見積もりを依頼してください。
夜間転倒対策リフォームに使える公的支援制度
バリアフリーリフォームには、費用負担を軽減するための公的な支援制度があります。
- 介護保険による住宅改修費の支給:
- 要支援1・2または要介護1~5の認定を受けている方が対象です。
- 対象となる工事は、手すりの取り付け、段差の解消、滑り止め床材への変更、引き戸等への扉の交換、洋式便器への交換など、夜間転倒対策に有効なものが多く含まれます。
- 原則として、対象工事費用の9割(一定以上の所得がある場合は8割または7割)が支給されます。支給限度基準額は生涯で20万円までです。
- 注意点: 介護保険の住宅改修を利用するには、工事前に市区町村への事前申請が必要です。ケアマネジャーに相談し、手続きを進めるのが一般的です。
- 各自治体による独自の補助金・助成金:
- お住まいの市区町村によっては、高齢者や障がいのある方のための住宅改修に対して、独自の補助金制度を設けている場合があります。
- 介護保険と併用できる制度もありますが、要件や対象工事は自治体によって異なります。お住まいの自治体の窓口やウェブサイトで確認してみましょう。
これらの制度を上手に活用することで、リフォームの費用負担を大きく減らすことができます。ただし、制度にはそれぞれ細かな条件や手続きがありますので、事前にしっかりと確認することが大切です。
信頼できる業者選びが成功のカギ
夜間転倒対策を含むバリアフリーリフォームを成功させるためには、信頼できる業者を選ぶことが非常に重要です。
- バリアフリーリフォームの実績: 高齢者向けのリフォーム経験が豊富で、専門知識を持つ業者を選びましょう。
- 丁寧なヒアリングと提案: ご家族の状況や体の状態をしっかりと聞き取り、最適なリフォームプランを提案してくれるか確認します。
- 現地調査の徹底: 図面だけでなく、実際に自宅を訪問して、現在の状況や課題を詳細に把握してくれる業者を選びましょう。
- 分かりやすい見積もり: 工事内容、費用、工期などが明確に記載された見積もりを提出してくれるか確認します。
- 複数の業者から見積もりを取る: 複数の業者から見積もりを取り、内容や費用を比較検討することで、適正な価格を知り、自分たちに合った業者を選ぶことができます。
忙しい中で業者選びを進めるのは大変かもしれませんが、大切なご家族の安全に関わることです。焦らず、じっくりと比較検討して信頼できるパートナーを見つけてください。
まとめ:安全な夜間移動で、安心できる暮らしを
高齢者の夜間における転倒は、重大な事故につながる可能性があり、ご本人だけでなくご家族の不安も大きいものです。夜間の移動経路となる廊下、トイレ、寝室、階段などの環境を整えるバリアフリーリフォームは、これらのリスクを軽減し、安全で安心できる暮らしを支えます。
手すりの設置、照明の改善、段差の解消、滑りにくい床材への変更、ドアの変更など、様々な対策があります。まずはリスクの高い場所を確認し、どのような対策が必要か検討してみてはいかがでしょうか。
リフォームには費用がかかりますが、介護保険の住宅改修費支給制度や自治体の補助金などを活用できる場合があります。これらの制度についても情報収集を行い、利用を検討しましょう。
専門的な知識が必要な場面もありますので、高齢者向けリフォームの実績が豊富な信頼できる業者に相談することをおすすめします。プロの視点からのアドバイスは、より効果的なリフォームの実現につながります。
大切なご家族が、夜間も安心して自宅で過ごせるよう、この機会にぜひ夜間転倒対策リフォームについて具体的に検討を進めてみてください。