まず何をすべき?費用を抑えて始める高齢者向けバリアフリーリフォームと安全対策
ご両親のためにバリアフリーリフォームを検討されているものの、「何から手をつけて良いか分からない」「費用がどれくらいかかるか心配」「仕事が忙しくてゆっくり情報収集する時間がない」といったお悩みをお持ちではありませんか。
確かに、バリアフリーリフォームと一言で言っても、様々な箇所や方法があり、全てを一度に行うのは費用も時間もかかります。しかし、実は大きな費用や工事を伴わなくても、高齢のご家族の安全と快適さを大きく向上させる対策はたくさんあります。
この記事では、まずどこから始めるべきか、費用を抑えながら効果的に進められるバリアフリーリフォームのポイントと、リフォームと並行してすぐにできる安全対策について、分かりやすく解説します。
なぜ「費用を抑えた最初の一歩」が重要なのか?
バリアフリーリフォーム全体を考えると、費用や工期に圧倒されてしまうかもしれません。しかし、「費用を抑えた最初の一歩」から始めることには、いくつかのメリットがあります。
- 心理的なハードルを下げる: 小さな工事や簡単な対策から始めることで、リフォームへの不安を軽減できます。
- 効果を確認できる: 効果的な箇所から対策を行うことで、その効果を実感し、次のステップへの参考にできます。
- 身体状況の変化に対応しやすい: 高齢のご家族の身体状況は変化していく可能性があります。一度に全てではなく、必要な部分から段階的に進めることができます。
- すぐに安全を確保できる: 費用のかかる大規模な工事を待たずに、今すぐできる対策で転倒などのリスクを減らせます。
まずは、費用や手間に無理のない範囲で、特に安全性が懸念される箇所から対策を検討してみましょう。
費用を抑えても効果の高いバリアフリーリフォーム箇所
全ての箇所を一度にリフォームする必要はありません。まずは、転倒リスクが高い場所や、日常的な動作に負担がかかる場所に絞って検討するのがおすすめです。比較的費用を抑えつつ、安全性を大きく高められる代表的なリフォーム箇所をご紹介します。
手すりの設置
- 効果: 身体を支え、バランスを保つことで転倒を予防します。立ち座りや移動の動作を補助し、自立した生活をサポートします。
- 主な設置場所: 玄関(上がり框付近)、廊下、トイレ、浴室、階段などが効果的です。ご家族の動きを観察し、必要と思われる場所にピンポイントで設置します。
- 費用目安: 1箇所あたり数万円から(設置する場所や手すりの種類、工事内容によって変動します)。比較的小規模な工事で済みます。
- 工期目安: 数時間から1日程度で完了することが多いです。
段差の解消・緩和
- 効果: 家の中の小さな段差は、高齢者にとって大きなつまずきの原因となります。段差をなくしたり、緩やかにしたりすることで転倒リスクを減らします。
- 主な対策箇所: 部屋の敷居、玄関の上がり框、廊下と部屋の境目など。敷居をなくしたり、スロープを設置したり、段差を低くする工事を行います。
- 費用目安: 数万円から数十万円(段差の高さや範囲、工法によって大きく異なります。敷居の解消など部分的なら数万円から可能です)。
- 工期目安: 数時間から数日程度。
滑り止め対策
- 効果: 滑りやすい床材や浴室の床は、転倒事故が起こりやすい場所です。滑りにくくすることで、安全な移動や動作を可能にします。
- 主な対策箇所: 廊下、リビング、キッチン、浴室の床など。滑りにくい床材(クッションフロアなど)への張り替えや、滑り止め効果のあるコーティング、浴室専用の滑りにくい床材への変更などがあります。
- 費用目安: 数万円から数十万円(範囲や材料によって異なります。部分的な施工やコーティングなら費用を抑えられます)。
- 工期目安: 数時間から数日。
照明の増設・変更
- 効果: 家の中が暗いと、段差や障害物が見えにくくなり転倒リスクが高まります。適切な明るさを確保することで、安全性が向上します。
- 主な対策: 廊下や階段、玄関、トイレまでの動線に足元灯やセンサーライトを設置。照明器具を交換して部屋全体を明るくする。
- 費用目安: 数千円から数万円(照明器具の種類や設置工事の規模による)。比較的安価で効果的な対策です。
- 工期目安: 数時間から1日。
リフォームほど費用をかけずに今すぐできる安全対策
大規模なリフォームは難しくても、日々の暮らしの中で注意することで、安全性を高めることができます。費用をほとんどかけずに、今すぐできる安全対策もあわせて行いましょう。
- 床の整理整頓: 床に物を置かないように徹底します。コード類は束ねたり、モールでカバーしたりしてつまずかないようにします。
- 家具の配置見直し: 通路は広く確保し、動きやすいように家具を配置します。方向転換が必要な場所の近くに手すり代わりになる丈夫な家具を置くことも検討できます(ただし、転倒時にも倒れない安全な家具を選ぶことが重要です)。
- ラグやマットの固定: 端がめくれやすいラグやマットは、滑り止めシートなどでしっかりと固定します。
- 履物の見直し: 家の中で履くスリッパや靴は、滑りにくくかかとの低い安定したものを選びます。
- 動線の確保: 夜間でもトイレまで安全に移動できるよう、寝室からトイレまでの通路を常に空けておきます。
これらの対策は、リフォームと組み合わせることでさらに効果を発揮します。
費用・工期の目安と公的支援制度
ここまでご紹介したような部分的なバリアフリーリフォームは、一般的に大規模なリフォームに比べて費用を抑えられ、工期も短く済むことが多いです。具体的な費用や工期は、建物の構造や選ぶ材料、工事内容によって大きく変動するため、必ず複数の業者から見積もりを取ることが重要です。
また、高齢者のためのバリアフリーリフォームには、公的な支援制度が利用できる場合があります。
- 介護保険の住宅改修費支給: 要支援または要介護の認定を受けている方が対象となる場合があります。特定のバリアフリー改修工事(手すり取り付け、段差解消、滑り止め、引き戸への変更など)に対して、原則として費用の一部が支給されます。支給の上限額や対象となる工事には条件があります。
- 自治体独自の補助金: お住まいの市区町村によっては、高齢者や障がいのある方のための住宅改修に対する独自の補助金制度を設けている場合があります。
これらの制度を利用することで、自己負担額を抑えることができます。制度の詳細は、お住まいの自治体の窓口や担当のケアマネージャーに確認することをおすすめします。
業者選びのポイント
費用を抑えつつ、安心してリフォームを進めるためには、信頼できる業者選びが重要です。特に、バリアフリーリフォームの実績が豊富で、高齢者の体の状態や生活スタイルに配慮した提案をしてくれる業者を選びましょう。
- バリアフリーリフォームの実績: これまでの施工事例を確認し、高齢者向けの改修経験が豊富かを確認します。
- 丁寧なヒアリングと現地調査: ご家族の状況や家屋の状態をしっかりと把握し、適切な提案をしてくれるかを見極めます。
- 分かりやすい説明: リフォーム内容、費用、工期について、専門用語を避け、丁寧に説明してくれる業者を選びます。
- 複数の見積もり比較: 最適な価格で、納得のいく内容で工事を進めるために、必ず複数の業者から相見積もりを取り、内容を比較検討します。
- 公的制度への対応: 介護保険や自治体の補助金制度の利用手続きに詳しいか、サポートしてくれるかも確認しておくと安心です。
- ケアマネージャーとの連携(介護保険利用の場合): 介護保険を利用する場合は、担当のケアマネージャーと連携して、より効果的な改修プランを立てられる業者だとスムーズです。
まとめ
高齢のご家族の安全と快適な暮らしのためにバリアフリーリフォームを検討することは、素晴らしい一歩です。「何から始めて良いか分からない」「費用が心配」という場合でも、まずは費用を抑えてできる手すりの設置や段差解消、照明の増設などから始めてみることをおすすめします。
また、リフォームだけでなく、ご自宅の整理整頓や家具の配置見直しといった、今すぐできる安全対策も非常に効果的です。
最初の一歩として、まずはご家族と話し合い、家の中で危険だと感じる場所や、不便を感じる場所をリストアップしてみてはいかがでしょうか。そして、ご紹介したような比較的費用を抑えられる対策から検討を始め、必要であれば専門の業者やケアマネージャーに相談してみてください。一歩ずつ進めることで、きっとご家族にとってより安全で快適な住まいを実現できるはずです。