これで分かる!介護保険を利用したバリアフリーリフォームの手順とポイント
ご高齢のご家族が自宅で安全に暮らすために、バリアフリーリフォームは有効な手段です。しかし、気になるのは費用や手続きのことではないでしょうか。特に「介護保険」を利用できると聞いたけれど、具体的にどう進めれば良いのか分からない、という方もいらっしゃるかもしれません。
介護保険は、一定の条件を満たせば、自宅のバリアフリーリフォーム費用の一部を補助してくれる心強い制度です。この制度をうまく活用することで、費用負担を抑えながら、ご家族がより安全で快適に暮らせる住まいを実現できます。
この記事では、介護保険を利用したバリアフリーリフォームについて、対象となる工事から申請、工事、そして費用が支給されるまでの具体的な流れを、分かりやすくご説明します。また、利用する上での大切なポイントや注意点もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
介護保険の住宅改修費支給制度とは
介護保険には「住宅改修費の支給」という制度があります。これは、要介護認定または要支援認定を受けている方が、自宅に手すりをつけたり段差を解消したりするバリアフリーリフォームを行った場合に、かかった費用のうち自己負担分を除いた額が保険から支給される制度です。
この制度は、ご家族が住み慣れた自宅で、できる限り自立した日常生活を送れるように支援することを目的としています。
介護保険で支給の対象となる主なバリアフリーリフォーム
介護保険の住宅改修費支給制度で対象となるのは、特定の種類の工事です。主なものは以下の通りです。
- 手すりの取付け: 廊下、階段、浴室、トイレなど、転倒しやすい場所や移動を助ける場所への手すりの設置。
- 段差の解消: 敷居の撤去、スロープの設置、床のかさ上げなどで、家の中の段差をなくす工事。
- 滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更: 畳からフローリングへの変更や、滑りにくい床材への変更など。
- 引き戸等への扉の取替え: 開き戸を引き戸や折れ戸に変更するなど、扉の開閉を容易にする工事。
- 洋式便器等への便器の取替え: 和式便器を洋式便器に取り替える工事。
- その他: 上記改修に付帯して必要となる工事(手すりの下地補強、扉撤去後の壁工事など)。
これらの工事がすべて対象になるわけではなく、あくまで高齢者の日常生活の便宜を図るため、またはご家族の介護負担を軽減するために行われるものが対象となります。増築や改築、間取りの変更などは原則として対象外です。
介護保険を利用したリフォームのステップ
介護保険を利用してバリアフリーリフォームを進めるには、いくつかのステップを踏む必要があります。間違った手順で進めると保険が適用されないこともありますので、以下の流れをよくご確認ください。
ステップ1:ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談
まずは担当のケアマネジャー、またはお住まいの地域の地域包括支援センターに相談することから始めます。介護保険のサービスを利用するには、まず要介護認定・要支援認定を受けていることが前提です。
相談の際には、ご家族の体の状態や自宅での困りごと、どのようなリフォームを検討しているのかを具体的に伝えます。ケアマネジャーなどが、制度の詳しい説明や、ご家族の状況に合ったリフォームの必要性を確認してくれます。
ステップ2:専門家による理由書の作成
リフォームが必要な理由や、どのような工事が適切かを記した「住宅改修が必要な理由書」を作成してもらいます。これは、通常、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの職員などが作成します。自宅を訪問し、ご家族の体の状態や住宅の状況を確認した上で作成される重要な書類です。
ステップ3:リフォーム業者を選定し、見積もりを取る
リフォーム内容が決まったら、工事を依頼する業者を選びます。介護保険でのリフォームに慣れている業者を選ぶと、手続きなどもスムーズに進むことが多いです。選定した業者に、理由書に基づいたリフォームの見積もり作成を依頼します。複数の業者から見積もりを取って比較検討するのも良いでしょう。
ステップ4:自治体へ必要書類を提出し、承認を待つ
工事を始める前に、お住まいの市区町村の介護保険窓口に必要書類を提出し、リフォーム内容の承認を得る必要があります。提出する書類は自治体によって若干異なりますが、一般的には以下のものが必要です。
- 介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費支給申請書
- 住宅改修が必要な理由書
- 工事費見積書
- 工事内容が分かる図面、写真(改修前)
- 住宅の所有者の承諾書(被保険者と住宅の所有者が異なる場合)
- 委任状(申請代行を依頼する場合)
書類に不備があると承認が遅れたり、申請が通らなかったりします。提出前にケアマネジャーや自治体の窓口で確認してもらうと安心です。自治体の承認が得られるまで、絶対に工事を始めないでください。
ステップ5:自治体の承認後、工事を実施
自治体から工事の承認が得られたら、リフォーム業者に連絡し、工事を開始してもらいます。
ステップ6:費用支払いと支給申請
工事が完了したら、業者に工事費用全額を支払います。その後、改めてお住まいの市区町村の介護保険窓口に、以下の書類を提出し、住宅改修費の支給申請を行います。
- 住宅改修費支給申請書
- 工事費の領収書
- 工事費内訳書
- 工事完了後の写真
- その他、自治体が必要とする書類
多くの自治体では、まず利用者が全額を業者に支払い、後から保険給付分が市区町村から利用者に支給される「償還払い」という方法がとられています。ただし、一部の自治体では、自己負担額のみを業者に支払い、残りの保険給付分は自治体から直接業者に支払われる「受領委任払い」や「代理受領」といった方法を選べる場合もあります。事前に自治体に確認しておきましょう。
ステップ7:住宅改修費の支給
申請書類の審査に通ると、後日、申請者の口座に保険給付分が振り込まれます。支給までには、申請から1〜2ヶ月程度かかる場合が多いです。
介護保険を利用する上での注意点
- 支給限度額: 支給の対象となる工事費の上限額は、原則として一人につき20万円です。このうち、自己負担割合(通常1割、所得によっては2割または3割)を除いた額が支給されます。例えば、1割負担の方の場合、20万円の工事に対して最大18万円が支給されます。この20万円の上限額は、一度の工事で使い切っても、複数回に分けて使っても構いません。
- 対象者の要件: 介護保険の住宅改修費支給制度を利用できるのは、要介護認定または要支援認定を受けているご本人です。世帯の方や、認定を受けていない方が利用することはできません。
- 事前の申請が必須: 繰り返しになりますが、工事を始める前に必ず自治体への事前申請と承認が必要です。 事後申請では原則として支給されません。
- ケアマネジャーとの連携: リフォーム内容が介護保険の対象となるか、ご家族の状況に合っているかなどを判断するために、ケアマネジャーや地域包括支援センターとの連携が非常に重要です。早い段階から相談するようにしましょう。
- 対象外工事: 制度の対象外となる工事も多いため、事前にしっかりと確認が必要です。自己判断せず、必ずケアマネジャーや自治体に確認しましょう。
- 引っ越しや転居: 転居した場合は、転居後の住宅について再度20万円の上限額まで利用可能です。
まとめ
介護保険の住宅改修費支給制度は、ご高齢のご家族が住み慣れた自宅で安全・安心な生活を送るために、ぜひ活用したい制度です。手続きにはいくつかステップがあり、事前申請が必須など注意すべき点もありますが、ケアマネジャーやリフォーム業者としっかり連携することで、スムーズに進めることができます。
ご家族の「困った」を解消し、より快適な暮らしを実現するために、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみることから始めてはいかがでしょうか。早めの情報収集と計画が、成功への第一歩となります。