自宅介護をラクに安全に!バリアフリーリフォームと福祉用具の連携ポイントと費用
高齢のご両親のために、安全で快適な住環境を整えたいとお考えのことと思います。仕事と介護の両立やリフォームの知識不足など、お悩みも多いのではないでしょうか。
自宅での介護を続ける上で、住まいのバリアフリー化は非常に重要です。しかし、リフォームだけで全ての課題が解決するわけではありません。多くの場合、バリアフリーリフォームで住環境を整えることと、体の状態に合わせた「福祉用具」を組み合わせることで、より安全かつ効果的に介護を進めることができます。
この記事では、バリアフリーリフォームと福祉用具を連携させることの重要性、具体的な連携ポイント、費用、そして介護保険などの公的支援制度の活用について、分かりやすく解説します。
なぜバリアフリーリフォームと福祉用具の連携が重要なのか?
バリアフリーリフォームは、住まいの物理的な構造を変え、段差をなくしたり手すりをつけたりすることで、移動の安全性を高めます。一方、福祉用具は、利用者の身体機能や生活状況に合わせて、動作を補助したり、介護者の負担を軽減したりするものです。
この二つを単独で考えるのではなく、連携させて計画することで、以下のようなメリットが得られます。
- より高い安全性の確保: 例えば、浴室に手すりを設置する(リフォーム)だけでなく、滑りにくいマットやシャワーチェアを使う(福祉用具)ことで、転倒リスクをさらに減らせます。
- 介護負担の軽減: 玄関にスロープを設置する(リフォーム)と同時に、段差昇降機や介助者のための歩行支援具(福祉用具)を活用することで、外出・帰宅がスムーズになり、介護者の身体的負担が減ります。
- 生活の質の向上: 寝室に電動ベッドを導入する(福祉用具)と、ベッド周りの手すり設置(リフォーム)を組み合わせることで、起き上がりや立ち上がりが楽になり、ご本人の自立を促せます。
- 費用の最適化: 高額なリフォームが必要かと思っていた箇所でも、適切な福祉用具を組み合わせることで、リフォームの規模を抑えられる場合があります。また、福祉用具はレンタル可能なものが多く、必要な期間だけ利用することで費用を抑えられます。
連携が効果的な具体的な場所とリフォーム・福祉用具の例
自宅の場所ごとに、バリアフリーリフォームと福祉用具の連携によって効果が高まる例をご紹介します。
- 玄関・アプローチ
- リフォーム: 段差解消(スロープ設置、式台設置)、手すり設置
- 福祉用具: 玄関台、携帯用スロープ、杖、歩行器、車いす
- 連携効果: 玄関前の段差解消リフォームに、手すり付きの玄関台や携帯用スロープを組み合わせることで、体の状態や状況に応じた安全な出入りが可能になります。車いす利用の場合は、固定式のスロープと電動車いすや介助用車いすの組み合わせが効果的です。
- 浴室・洗面所
- リフォーム: 浴槽の高さ変更、またぎやすい浴槽への交換、出入口の段差解消・扉変更(引き戸など)、手すり設置、滑りにくい床材への変更
- 福祉用具: シャワーチェア、浴槽内いす、バスボード、滑り止めマット、入浴用手すり(工事不要タイプ)
- 連携効果: 浴室の出入口段差解消と手すり設置に加え、シャワーチェアやバスボードを使うことで、安全に座って体を洗ったり、浴槽への出入りが楽になったりします。リフォームで難しい場合でも、福祉用具で多くの部分をカバーできることがあります。
- トイレ
- リフォーム: 洋式への変更、手すり設置(縦・横)、出入口の段差解消・扉変更、スペース拡張
- 福祉用具: 補高便座、ポータブルトイレ、尿器、手すり(工事不要タイプ)
- 連携効果: トイレ内に手すりを設置し、さらに立ち上がりをサポートする補高便座や工事不要の据え置き型手すりを組み合わせることで、安全な排泄動作を支援します。改修が難しい場合は、居室近くにポータブルトイレを設置することも選択肢となります。
- 居室・寝室
- リフォーム: 床材の変更(滑りにくい、硬すぎない)、手すり設置、照明の増設・変更
- 福祉用具: 電動ベッド、体位変換器、床ずれ防止用具、移動用リフト、歩行器、車いす
- 連携効果: ベッド周りに手すりを設置し、さらに電動ベッドを導入することで、起き上がりやベッドからの移動がスムーズになります。寝たきりに近い状態でも、移動用リフトなどの福祉用具を組み合わせることで、居室での安全な介助が可能になります。
- 廊下・階段
- リフォーム: 手すり設置、段差解消(スロープ、ホームエレベーター、階段昇降機)、床材の変更、照明の増設
- 福祉用具: 杖、歩行器、車いす、階段昇降機(レンタル可能な場合あり)、移動用リフト
- 連携効果: 廊下や階段に手すりを設置するバリアフリーリフォームは基本ですが、移動に不安がある場合は歩行器や杖といった福祉用具が日常的な安全をサポートします。階段の利用が困難な場合は、リフォームでの昇降機設置、またはレンタルの福祉用具としての昇降機を検討することになります。
費用と公的支援制度の活用
バリアフリーリフォームや福祉用具の費用は、工事内容や用具の種類によって大きく異なります。
- バリアフリーリフォーム費用の目安:
- 手すり設置:数万円~15万円程度/箇所
- 段差解消:数万円~数十万円/箇所
- 扉の交換(開き戸→引き戸など):10万円~30万円/箇所
- 浴室全体改修:50万円~150万円以上
- トイレ全体改修:20万円~50万円以上
- 費用はあくまで目安です。工事の範囲や建物の構造によって大きく変動します。
- 福祉用具費用の目安:
- レンタル:月額数百円~数千円程度(品目による)
- 購入:数千円~数十万円(品目による)
- 電動ベッドや車いすなど高額なものは購入よりもレンタルが一般的です。
これらの費用に対して、以下の公的支援制度を活用できる場合があります。
- 介護保険制度
- 居宅介護(介護予防)住宅改修費: 要支援または要介護の認定を受けている方が、自宅に手すりをつけたり、段差を解消したりするなどのバリアフリーリフォームを行う場合に、原則20万円を上限として、費用の9割(所得によっては8割または7割)までが支給されます。生涯で一度の枠ですが、転居したり、介護度が3段階以上重くなった場合は再度利用できる場合があります。
- 特定福祉用具購入費: 入浴補助用具や排泄用具など、貸与になじまない特定の福祉用具を購入する場合に、年間10万円を上限として、費用の9割(所得によっては8割または7割)までが支給されます。
- 福祉用具貸与費: 歩行器や車いす、特殊寝台(電動ベッド)など、比較的利用期間が長くなる福祉用具をレンタルする場合に、費用の9割(所得によっては8割または7割)が保険給付されます(自己負担は1割~3割)。
- 介護保険のサービスを利用するには、事前にケアマネジャーに相談し、ケアプランに位置づけてもらう必要があります。制度の詳細は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターにご確認ください。
- 各自治体の補助金制度: 介護保険の住宅改修費とは別に、各自治体が独自の補助金制度を設けている場合があります。対象となるリフォーム内容や要件は自治体によって異なりますので、事前に確認が必要です。
専門家との連携が成功の鍵
バリアフリーリフォームと福祉用具の連携をスムーズに進めるためには、複数の専門家と連携することが非常に重要です。
- ケアマネジャー: 介護保険サービスの中心的な存在です。ご本人の体の状態や生活の課題を把握し、必要なリフォームや福祉用具についてのアドバイス、ケアプラン作成、関係機関への連絡調整を行います。まずはケアマネジャーに相談することから始めましょう。
- 福祉用具専門相談員: 福祉用具に関する専門知識を持ち、利用者の身体状況や住環境に合った福祉用具を選定し、使い方のアドバイスを行います。福祉用具貸与・購入事業所に所属しています。
- リフォーム事業者: バリアフリーリフォームの実績が豊富な事業者を選びましょう。福祉用具との連携の重要性を理解し、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と密に連携できる事業者だと安心です。
これらの専門家が情報を共有し、連携して計画を立てることで、ご本人にとって本当に必要なリフォームと福祉用具の最適な組み合わせが見つかります。
まとめ
高齢のご両親が住み慣れたご自宅で安全かつ快適に過ごすためには、バリアフリーリフォームと福祉用具を組み合わせて活用することが非常に効果的です。
単に段差をなくすだけでなく、体の状態に合わせた福祉用具を併用することで、自立を支援し、介護される方・する方双方の負担を軽減できます。介護保険の住宅改修費や福祉用具の給付・貸与制度を賢く利用することで、費用の負担も軽減可能です。
リフォームと福祉用具、それぞれの専門家の意見を聞きながら、ご本人にとって最適な住まいとサービスの計画を進めていくことが成功の鍵となります。まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、どのような選択肢があるのか情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
ご両親のより良い暮らしのために、この記事がお役に立てれば幸いです。