【見え方対策】高齢者のバリアフリーリフォーム 安全・快適な暮らしのために
ご両親など、大切なご家族のためにバリアフリーリフォームを検討されている皆様、こんにちは。「バリアフリー快適リフォーム」編集部です。
バリアフリーリフォームと聞くと、段差の解消や手すりの設置、引き戸への交換などをイメージされる方が多いかもしれません。しかし、高齢になるにつれて多くの方が経験される「見え方の変化」も、実は自宅での安全を大きく左右する要因の一つです。
視力が低下したり、物の色の区別がつきにくくなったりすると、ちょっとした段差や障害物が見えにくくなり、転倒のリスクが高まります。また、暗い場所や眩しい場所では、移動そのものが不安になることもあります。
この記事では、高齢者の見え方の変化に対応するためのバリアフリーリフォームについて、具体的な対策やポイントをご紹介します。ご両親がこれからも安全に、そして安心して自宅で過ごせるよう、ぜひ参考にしてください。
なぜ見え方の変化がリフォームで重要なのか
高齢者の視力は、個人差はありますが、若い頃と比べて様々な変化が生じます。 * 視力の低下: 物が見えにくくなる * 視野の狭まり: 見える範囲が狭くなる * 色の識別能力の低下: 特に青や緑、紫といった寒色系の色の区別が難しくなる * 光に対する感度の変化: 眩しさを感じやすくなる、暗順応(暗さに目が慣れること)に時間がかかる * コントラスト感度の低下: 薄い色と濃い色の違いなどが分かりにくくなる
これらの変化により、家の中の安全性が損なわれる可能性があります。例えば、床の色と壁の色が似ていると境界が分かりにくく、壁に手をつこうとしても位置が掴みにくい、といったことが起こり得ます。また、小さな段差や障害物が見えにくくなり、つまずきや転倒の原因となることも少なくありません。
バリアフリーリフォームで、こうした見え方の変化を考慮した対策を行うことは、転倒予防や安心して移動できる環境づくりにおいて非常に重要です。
視力低下に対応する具体的なリフォーム箇所と対策
見え方の変化に対応するためのバリアフリーリフォームは、いくつかの場所で実施できます。それぞれの場所に応じた具体的な対策をご紹介します。
1. 照明の工夫
見え方の変化への対応として、最も効果が期待できるのが照明の工夫です。
- 十分な明るさの確保: 部屋全体を均一に明るくすることが重要です。特に、廊下、階段、玄関、トイレ、浴室といった移動の多い場所や、作業を行うキッチンなどは、より明るくする必要があります。ただし、明るすぎると眩しさを感じやすくなるため、適度な明るさが必要です。
- 手元・足元を照らす: 階段の足元灯や、ベッドサイドの手元灯、キッチンでの作業灯など、必要な場所に必要な明るさを確保する補助照明が有効です。
- 色温度の検討: 一般的に、高齢者は暖色系の光(電球色)よりも、昼白色や昼光色といった白っぽい光の方が物の色や形を識別しやすいと言われています。部屋の用途や好みに合わせて選びますが、作業場所は白っぽい光、くつろぐ場所は暖色系など使い分けるのも良いでしょう。
- 眩しさ対策: 直接光源が目に入らないように、間接照明を取り入れたり、シェード付きの照明を選んだりします。ダウンライトやスポットライトは、影ができやすく、眩しさを感じやすいため、設置場所や向きに注意が必要です。
リフォーム内容例: * シーリングライトの高効率タイプへの交換 * ダウンライトの増設または交換 * 手すり一体型照明の設置 * 人感センサー付き照明の設置(廊下、トイレなど) * 調光・調色機能付き照明の導入
2. 色とコントラストの活用
視力や色の識別能力が低下しても、色の対比(コントラスト)を効果的に使うことで、空間の認識を助けることができます。
- 境界を明確にする: 床と壁の色を大きく変えたり、巾木の色を目立つようにしたりすることで、空間の広がりや境界線が分かりやすくなります。
- 段差を目立たせる: 階段の踏み板の先端に、明るい色や蛍光色のラインを入れる、または異なる色の材料を使うことで、段差の存在を明確にします。
- 手すりの色: 壁と異なる色の手すりを選ぶことで、手すりの位置を素早く見つけやすくなります。
- スイッチやコンセント: 壁の色と異なる色やデザインのものを選ぶと、場所が分かりやすくなります。
リフォーム内容例: * 壁紙や床材の色、柄の変更 * 巾木や建具の色の変更 * 階段の踏み板へのノンスリップ材(色付き)の設置 * 手すりの色選び(壁の色とのコントラストを考慮) * スイッチプレートの交換(色やデザインの変更)
3. 床材の選択
滑りにくい素材を選ぶことは基本ですが、見え方の点でも考慮が必要です。
- 単色でマットな質感: 柄が複雑すぎたり、光沢があったりする床材は、影や反射で見えにくくなることがあります。単色で光沢の少ない(マットな)素材の方が、空間を認識しやすく安全です。
- 明るい色: 一般的に、明るい色の床の方が空間全体が明るく感じられ、物が見えやすくなります。
リフォーム内容例: * 滑りにくく、単色でマットな質感の床材(クッションフロア、フローリングなど)への張り替え
見え方対策リフォームの費用目安と工期
見え方対策のリフォームは、工事の内容によって費用や工期が大きく異なります。以下に一般的な目安を示します。
- 照明器具の交換・増設:
- 費用: 数千円~数万円程度/箇所 (器具の種類や工事内容による)
- 工期: 半日~1日程度
- 壁紙・床材の張り替え(一部屋):
- 費用: 5万円~20万円程度/部屋 (材料費、工事費による)
- 工期: 1日~3日程度
- 階段の段鼻(踏み板先端)へのライン設置:
- 費用: 数千円~数万円程度 (材料費、階段の段数による)
- 工期: 半日~1日程度
- 手すりの設置(色考慮):
- 費用: 3万円~10万円程度/箇所 (手すりの長さ、設置場所、工事内容による)
- 工期: 半日~1日程度
複数のリフォームをまとめて行う場合は、総額は増えますが、一括で依頼することで費用が抑えられる場合もあります。詳細な費用や工期については、必ず複数のリフォーム業者から見積もりを取り、確認することが重要です。
公的支援制度の活用
見え方の変化に対応するためのリフォームも、条件を満たせば公的支援制度の対象となる場合があります。
- 介護保険制度:
- 要支援1以上または要介護1以上の認定を受けている方が対象です。
- 自宅で安全かつ円滑に日常生活を送るための住宅改修に対して、原則として支給限度基準額20万円(自己負担1割~3割)の範囲内で費用の9割~7割が支給されます。
- 「転倒予防」や「移動の安全確保」を目的とした手すりの設置や段差解消、滑り止め目的の床材変更などが一般的な対象工事ですが、ケアマネジャーに相談し、視力低下に伴う具体的な困りごととリフォーム内容を結びつけて申請することで、照明の増設や色分けなども対象となる可能性がないか確認できます。
- 申請には事前の手続きが必要です。必ず担当のケアマネジャーや、お住まいの市区町村の介護保険窓口にご相談ください。
- 自治体独自の補助金:
- お住まいの市区町村が、高齢者や障がいのある方向けに独自の住宅改修助成制度を設けている場合があります。
- 介護保険制度と併用できる制度もあります。
- 具体的な制度の内容や申請条件は自治体によって異なりますので、市区町村の福祉課や高齢者担当窓口にお問い合わせください。
これらの制度を利用することで、リフォーム費用の負担を軽減できます。しかし、制度の対象となる工事内容や申請手続きには細かな規定がありますので、事前にしっかりと確認し、適切な手続きを行うことが大切です。
信頼できる業者選びのポイント
見え方の変化に対応したバリアフリーリフォームを成功させるためには、業者選びが重要です。
- バリアフリーリフォームの実績: 高齢者の特性や、見え方の変化に対応したリフォームの経験がある業者を選びましょう。これまでの施工事例を見せてもらうのも参考になります。
- 丁寧なヒアリングと提案: ご両親の現在の状況(視力の程度、家での困りごとなど)をしっかり聞き取り、それに合わせた具体的な提案をしてくれるかどうかが重要です。専門的な知識だけでなく、利用者の立場に立って考えてくれる業者を選びましょう。
- 複数の見積もり: 複数の業者から見積もりを取り、内容や費用を比較検討しましょう。内訳が明確で、説明が丁寧な見積もりを出す業者の方が信頼できます。
- コミュニケーション: 担当者と話しやすく、疑問点に丁寧に答えてくれるかどうかも大切なポイントです。
これらの点を踏まえ、複数の候補の中から、最も信頼できると感じる業者を選びましょう。
まとめ
高齢者の見え方の変化は、自宅での安全を脅かす大きな要因となります。照明の適切な設置、色のコントラスト活用、安全な床材選びといった視覚的な対策を取り入れたバリアフリーリフォームは、ご両親がこれからも安心して、安全に、そして快適に住み慣れた家で暮らし続けるために非常に有効です。
どのようなリフォームが必要か、費用はどのくらいかかるのか、利用できる制度はあるのかなど、分からない点が多いと感じられるかもしれません。まずは、ご両親の家でどのようなことに困っているのか、どこが危険だと感じるのかを具体的に話し合ってみることから始めてはいかがでしょうか。
そして、信頼できるリフォーム業者に相談し、専門家のアドバイスを受けながら、ご家族にとって最適なバリアフリーリフォームを検討してみてください。この記事が、皆様のリフォーム計画の一助となれば幸いです。