これで安心!高齢者のための手すり バリアフリーリフォーム 選び方・設置場所・費用目安
自宅を安全で快適な空間にするバリアフリーリフォームの中でも、特に重要視されるのが「手すり」の設置です。高齢になると、筋力やバランス感覚が衰え、ちょっとした段差や滑りやすい場所で転倒しやすくなります。そんな転倒事故を防ぎ、ご家族が安心して自宅で過ごせるようにするために、手すりは非常に効果的な設備です。
この記事では、高齢のご家族のために手すりの設置を検討しているものの、どこから手を付けて良いか分からないという方に向けて、手すりリフォームの進め方を分かりやすく解説します。選び方から設置場所、費用目安、さらには利用できる公的支援制度まで、必要な情報を網羅してお届けします。
なぜ高齢者にとって手すりが必要なのか
高齢者の住まいにおける転倒事故は、日常生活の場で多く発生しています。厚生労働省の統計によると、高齢者の事故で最も多いのは転倒によるものです。転倒は骨折などの重傷につながりやすく、それが原因で寝たきりになったり、介護が必要になったりするケースも少なくありません。
手すりは、体のバランスを保ち、立ち上がりや移動をサポートする役割を果たします。これにより、高齢者が自分の力で安全に動き回れる範囲が広がり、自立した生活を長く続けるためにも役立ちます。単に事故を防ぐだけでなく、精神的な安心感にもつながる重要なバリアフリー対策なのです。
手すりの設置を検討すべき場所
自宅内で手すりの設置を検討したい主な場所は以下の通りです。それぞれの場所で手すりがどのような役割を果たすのかをご説明します。
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玄関・アプローチ:
- 段差の昇降や靴の脱ぎ履きの際に体が不安定になりやすい場所です。
- 手すりがあると、体をしっかり支えられ、安全な出入りが可能になります。屋外から玄関内まで連続して設置するとより効果的です。
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廊下:
- 部屋間の移動時に体のバランスを崩すことがあります。特に長い廊下や、曲がり角、段差のある場所では手すりが有効です。
- 歩行を補助し、ふらつきによる転倒を防ぎます。
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階段:
- 階段の上り下りは、高齢者にとって最も負担が大きく危険な場所の一つです。
- 手すりは体重を分散させ、安全な昇降をサポートします。両側に設置するとさらに安全性が高まります。
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浴室:
- 水に濡れて滑りやすく、浴槽をまたぐ際にバランスを崩しやすい場所です。
- 出入り口、洗い場、浴槽脇など、立ち座りや姿勢保持が必要な場所に設置することで、安全に入浴できます。
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トイレ:
- 狭い空間で、立ち座りの動作が多い場所です。
- 便器の両側や、立ち上がりの動作方向にある壁に設置すると、安定した姿勢を保ちやすくなります。
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寝室:
- ベッドからの起き上がりや、夜間にトイレに行く際の移動に不安がある場合に有効です。
- ベッド脇や、寝室から廊下への出口にかけて設置を検討します。
これらの場所は一般的に必要性が高い場所ですが、ご家族の体の状態や生活動線に合わせて、最適な設置場所は異なります。リフォーム業者に相談する際には、自宅での具体的な困りごとやよく利用する場所を詳しく伝えることが大切です。
手すりの種類と選び方のポイント
手すりには様々な種類があり、設置場所や用途によって適切なものを選ぶ必要があります。
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形状:
- I型: 短い区間や、立ち座りをサポートする縦向きの設置に適しています(玄関、トイレ、浴室など)。
- L型: 角を曲がる場所や、縦と横の動きをサポートしたい場所に有効です(階段の踊り場、浴室、トイレなど)。
- 連続型: 廊下や階段など、比較的長い距離を移動する場所に適しており、途切れなく設置することでスムーズな移動をサポートします。
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素材:
- 木製: 温かみがあり、内装になじみやすい素材です。握った時の感触が良いものが多くあります。
- 樹脂・金属製: 耐久性や耐水性に優れており、主に浴室や屋外などに使用されます。表面に滑り止め加工が施されたものもあります。
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太さ:
- 一般的に、高齢者が握りやすいとされる手すりの太さは、直径32mmから36mm程度です。実際に握ってみて、しっかりと握れる太さを選ぶことが重要です。
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高さ:
- 歩行用の手すりの高さは、床から75cm~85cm程度が目安とされています。ご家族の身長に合わせて、自然に握れる高さを確認しましょう。
- 立ち座り用の手すりは、使う方の身長や体の状態に合わせて、適切な高さを調整する必要があります。
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その他の機能:
- 夜間の使用を考慮した蓄光機能付きのものや、滑り止め加工が施されたものなど、より安全性を高める機能を持つ手すりもあります。
手すりを選ぶ際は、デザイン性も大切ですが、最も重要なのは実際に使用するご家族が安全に、そして快適に使えるかどうかです。ショールームなどで実際に握ってみることをおすすめします。
手すりリフォームの費用目安と工期
手すりの設置にかかる費用は、設置場所の長さ、壁の下地の状況、選ぶ手すりの種類や素材、依頼する業者によって大きく異なります。一般的な目安としては以下のようになります。
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費用目安:
- 廊下や階段などへの直線的な手すりの設置(2~4m程度): 5万円~15万円程度
- 玄関、トイレ、浴室などのI型・L型手すりの設置(1~2ヶ所): 3万円~10万円程度
- ※上記費用には、手すり本体の費用と工事費(壁の下地補強含む)が含まれます。壁の下地が弱い場合や、広範囲に設置する場合は費用が高くなる傾向があります。
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工期:
- 手すりの設置のみであれば、通常1ヶ所あたり半日~1日程度で完了することが多いです。
- 複数の場所に設置する場合や、壁の下地補強に時間がかかる場合は、数日かかることもあります。
正確な費用と工期を知るためには、複数のリフォーム業者から見積もりを取り、内容を比較検討することが不可欠です。
利用できる公的支援制度
高齢者のためのバリアフリーリフォーム、特に手すりの設置には、様々な公的支援制度を利用できる可能性があります。これらの制度を活用することで、リフォーム費用の負担を軽減できます。
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介護保険の住宅改修費支給:
- 要支援または要介護認定を受けている方が対象です。
- 自宅で安全に生活できるように行う特定の住宅改修(手すりの取付け、段差の解消など)にかかる費用の一部(原則9割または8割)が支給されます。
- 支給限度額は、対象となる住宅改修費用20万円までです。つまり、自己負担は最大でも2万円(1割負担の場合)となります。
- 利用には、事前にケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、市町村に申請を行う必要があります。工事着工前に申請・許可が必要な場合がほとんどですので、必ず事前に確認しましょう。
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自治体独自の補助金制度:
- お住まいの市区町村によっては、独自のバリアフリーリフォーム補助金制度を設けている場合があります。
- 介護保険の対象とならない場合や、介護保険の支給限度額を超過する場合でも利用できる可能性があります。
- 対象者や補助金額、申請条件は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村の窓口やウェブサイトで確認してみましょう。
これらの制度は、手すりリフォームを行う上で非常に有効な手段です。担当のケアマネジャーやリフォーム業者に相談し、利用できる制度を確認しながら計画を進めることをお勧めします。
信頼できるリフォーム業者の選び方
手すりの設置は、壁の構造や使う方の体の状態を正確に判断し、適切な位置にしっかりと固定することが重要です。そのため、信頼できる業者に依頼することが成功の鍵となります。
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バリアフリーリフォームの実績を確認する:
- 高齢者向けのリフォーム経験が豊富な業者を選びましょう。これまでの事例や、利用者の声などを参考にしてください。
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丁寧なヒアリングと提案力:
- ご家族の体の状態や生活習慣、自宅での具体的な困りごとをしっかりと聞き取り、それに基づいた最適な提案をしてくれるかを見極めましょう。一方的な提案だけでなく、複数の選択肢を提示してくれる業者だと安心です。
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見積もりの内容が明確か:
- 工事内容、材料費、工賃などが項目ごとに詳細に記載されているか確認します。不明な点があれば遠慮なく質問しましょう。
- 介護保険や補助金の利用についても相談に乗ってくれる業者を選ぶとスムーズです。
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担当者の人柄と相性:
- リフォームは、業者とコミュニケーションを取りながら進めるものです。担当者が誠実で信頼できる人柄かどうかも重要なポイントです。
複数の業者から相見積もりを取り、上記のような点を比較検討することで、安心して任せられる業者を見つけることができるでしょう。
まとめ
高齢のご家族が自宅で安全に、そして快適に過ごすために、手すりの設置は非常に有効なバリアフリー対策です。転倒リスクの高い場所を重点的に、ご家族の体の状態に合わせた最適な手すりを選ぶことが大切です。
手すりリフォームは、比較的短期間で完了し、費用も抑えやすい場合が多いですが、公的支援制度を賢く活用することで、さらに費用負担を軽減できます。
この記事でご紹介した情報を参考に、ぜひ早めに手すりリフォームをご検討ください。適切な手すりの設置は、ご家族の安全を守り、自立した生活をサポートする大切な一歩となるでしょう。もし不安な点があれば、バリアフリーリフォームの実績が豊富な専門業者に相談することをお勧めします。