これでもっと安心!家の中の「動線」に着目したバリアフリーリフォーム
ご自宅やご実家で暮らす高齢のご家族の安全について、「家の中でつまずいたりしないか」「夜中にトイレに行くときが心配だ」といった不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
高齢者の住まいにおける事故で特に多いのが、家の中での転倒です。そして、転倒は多くの場合、家の中を移動する「動線」上で起こります。
この記事では、家の中の「動線」に着目したバリアフリーリフォームの重要性と、安全な動線を確保するための具体的なリフォーム箇所や対策についてご紹介します。効率的に情報を得て、大切なご家族が安心して暮らせる環境を整えるための一歩として、ぜひ参考にしてください。
なぜ「動線」に着目するのか?高齢者の安全な暮らしと動線の関係
高齢になると、身体機能の変化によってバランスを崩しやすくなったり、視力が低下して小さな段差や物の影が見えにくくなったりします。このような状態で、普段何気なく移動している家の中の「動線」上に危険が潜んでいると、転倒事故に繋がりやすくなります。
例えば、 * 玄関からリビングまでの少しの段差 * 廊下に敷かれた滑りやすいマット * 夜中にトイレに行く際の、暗くて物の多い廊下 * 浴室の出入り口にある高い敷居
これらはすべて、生活の動線上にある危険箇所です。これらの動線上の危険を解消することが、転倒事故を防ぎ、高齢のご家族が自宅で安全に、そして自立して生活を続けるために非常に重要になります。
動線に着目した具体的なバリアフリーリフォーム箇所と対策
家の中の主な動線と、それぞれの場所で検討したいバリアフリーリフォームをご紹介します。
1. 玄関から廊下、リビングへの動線
家への出入りは、まずこの動線から始まります。
- 段差の解消: 玄関の上がり框(あがりかまち)の段差を緩やかにしたり、スロープを設置したりします。小さな段差でも、つまずきの原因となります。
- 手すりの設置: 玄関ドアの近くや上がり框の部分に手すりを設置すると、靴の脱ぎ履きや段差の上り下りが安全に行えます。廊下にも連続して手すりを設置することで、移動の際の支えになります。
- 扉の変更: 開き戸から引き戸に変更することで、扉の開閉に広いスペースが不要になり、車椅子での移動もスムーズになります。
- 床材: 滑りにくく、段差のない床材を選びます。
2. リビングからトイレ、浴室への動線
一日のうちで何度も利用する重要な動線です。
- 廊下の幅: 可能な範囲で廊下幅を広げると、車椅子や歩行器での移動が楽になります。
- 手すりの設置: 廊下に連続した手すりを設置します。特に、トイレや浴室の出入り口付近は、立ち座りやバランス保持のために手すりが有効です。
- 扉の変更: トイレや浴室の開き戸を引き戸や折れ戸に変更すると、開閉時の負担が減り、万が一中で倒れても外から開けやすくなります。
- 床材: 廊下からトイレ、浴室まで、段差がなく滑りにくい床材で統一すると安全性が高まります。
3. 寝室からトイレへの動線
夜間の移動は、視界が悪く特に危険が伴います。
- 照明: 足元を照らすフットライトや、センサー付き照明を設置すると、夜中でも安全に移動できます。主照明のスイッチの位置も見直しましょう。
- 段差・障害物の排除: 寝室からトイレまでの動線上に、段差や滑りやすい物、移動の妨げになる家具などを置かないようにします。
- 手すり: 必要に応じて廊下や寝室の壁沿いに手すりを設置します。
4. キッチン周りの動線
調理や片付けなど、立ち作業が多く、水や油で滑りやすい場所です。
- 床材: 滑りにくく、拭き取りやすい床材を選びます。
- 収納: 高い場所や低い場所への物の出し入れが負担にならないよう、引き出し式の収納にするなど、配置を見直します。
- 作業スペース: 移動が最小限で済むよう、効率的な動線を確保できるキッチンレイアウトを検討します。
動線全体のバリアフリーリフォーム計画の立て方
家全体の動線を改善する場合、どこから手をつけるか悩むかもしれません。まずは、ご家族が日常生活で最も頻繁に移動する動線や、特に危険だと感じている場所から優先的に検討するのが良いでしょう。
- 現状の確認: 家の中を一緒に歩き、危険な箇所や移動しにくい場所をリストアップします。
- 優先順位の決定: 転倒リスクの高い場所や、使用頻度の高い場所から優先順位をつけます。
- 専門家への相談: バリアフリーリフォームの実績が豊富なリフォーム会社に相談し、専門家のアドバイスを受けながら具体的な計画を立てます。全体像を伝えることで、効率的な提案を受けられます。
費用目安と利用できる制度
動線改善のためのバリアフリーリフォームの費用は、リフォーム内容や箇所によって大きく異なります。
- 手すり設置: 数万円~10万円程度/箇所
- 段差解消: 数万円~数十万円/箇所(スロープ設置や床上げなど)
- 開き戸を引き戸に変更: 15万円~40万円程度/箇所
- 床材変更(滑りにくい床へ): 10万円~30万円程度(範囲による)
複数の箇所を同時に行う場合や、大規模な改修を含む場合は、費用はさらに高くなります。正確な費用は、必ず専門のリフォーム会社に見積もりを依頼して確認してください。
バリアフリーリフォームには、国の補助金や自治体独自の助成制度、介護保険を利用した住宅改修費の支給制度などがあります。これらの制度を利用することで、費用負担を軽減できる可能性があります。特に、介護保険の住宅改修費支給制度は、要介護認定を受けている方が対象となり、手すりの設置や段差解消などの工事費用の一部(原則として上限20万円の9割または8割)が支給される重要な制度です。
これらの制度にはそれぞれ条件や申請手続きがありますので、事前に市区町村の窓口や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーに相談してみることをお勧めします。
バリアフリーリフォームの業者選びのポイント
動線に着目したリフォームを成功させるためには、高齢者の身体状況や生活スタイル、そして家全体の構造を理解している業者を選ぶことが重要です。
- バリアフリーリフォームの実績が豊富か
- こちらの希望や不安を丁寧に聞き、専門的な視点から具体的な提案をしてくれるか
- 複数の提案(費用や工期の違いなど)をしてくれるか
- 見積もり内容が明確で分かりやすいか
- 担当者の対応が信頼できるか
複数の業者から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
まとめ
高齢のご家族が自宅で安全に、そして快適に暮らすためには、家の中の「動線」に着目したバリアフリーリフォームが非常に有効です。玄関からリビング、リビングからトイレ・浴室、寝室からトイレなど、普段よく使う動線上の段差や滑りやすさ、暗さなどを解消することで、転倒リスクを大きく減らすことができます。
具体的なリフォーム内容としては、手すりの設置、段差の解消、開き戸の引き戸への変更、滑りにくい床材への張り替え、適切な照明の設置などがあります。これらのリフォームには費用がかかりますが、国の補助金や介護保険の住宅改修費支給制度などを活用することで、負担を軽減できる可能性があります。
まずはご家族と一緒に家の中の「危険箇所」を洗い出し、どのようなリフォームが必要か検討することから始めてみてください。そして、信頼できるリフォーム会社に相談し、専門家のアドバイスを受けながら、安心できる住まいづくりを進めていきましょう。